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(BL小説)風のゆくえには~クーラー設定温度の戦い

2017年08月22日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切


 新婚・溝部家「初めての夏」

<キンキンに冷えた部屋にしたい夫・溝部vs冷房なんていらない。扇風機で充分!な妻・鈴木さん>

 で、クーラー設定温度の戦いが毎日繰り広げられています。

 よその家ではどうなんだろう……と思った溝部君。高校同級生の桜井浩介に、ラインで聞いてみました。

ーーー

【溝部視点・桜井浩介とのライン】


『設定温度の戦い? うちはないよ』

(キョトンとした桜井の顔が見えるようだ……)

 あー、やっぱりお前ら男同士だから、適温も同じってことか……

『ううん。うちは、慶が暑がりでおれが寒がりだから、希望温度は違うんだけどね』

 …………。どうせ、尽くしたい病の桜井が合わせてるんだろ……

『うん。そう。……ま、おれが長袖着ればいい話かなって思ってて……』

 だと、思った……

『あ! だからって、それ鈴木さんに求めないでよ? この考え、おれが特殊な病気なだけだからね?』

 ほんと羨ましい病気だな………。
 お前、合わせてばっかでストレスたまんねーの?

『んー……、合わせることが喜びというか……』

 ………マゾだな

『う……否定はしないよ……。あ、でも、クーラーの件に関しては、嬉しいこともあるんだよ』

 嬉しいこと?

『うん。おれ、末端冷え性なんだけどさ』

 OLかよ

『男の冷え性だってあるんだよ!』

 聞いたことねえなあ

『あるんだって! 慶が言ってた!』

 へー……まあ医者が言うんだから本当なんだろうなあ……

『だよっ』

 で?

『で、手と足の先、すごく冷たいんだけどさ』

 うん

『いっつも慶が温めてくれるんだ~❤』

 ……………………は?

『おれの足、足で挟みこんで温めてくれたり』

 ………。(←っていう絵文字)

『手も、両手で包み込んでくれたり、ほっぺとか首とかにくっつけてくれたりして』

『それで、お前の手、冷たくて気持ちいいって言ってくれるんだ~❤』

 ………。
 
 ………。

 ………。

(今、「シ」から始まる言ってはいけない二文字の言葉が頭をよぎってしまった……)


『溝部も鈴木さんのこと温めてあげればいいじゃん』

 そんなことをしようものなら、余計に怒りを買いそうな気がしますが……

『えーそうかなあ? 絶対嬉しいよ?』
 
 ……じゃあ、機嫌が良さそうな時にやってみます……

『うん。是非!』

 はい……参考になりました……アリガトウゴザイマシタ……
 

(…………。桜井に聞いたおれが馬鹿だった……)


***


【浩介視点】


 その夜……

「おやすみ」
「おやすみなさい」

 いつものようにコツンとおでこを当てて言い合う。
 そして慶は、おれの手をそっと掴んで自分の頬に当ててくれると、

「あー冷た冷たー……気持ちいー……」

 満足そうに言って、そのままスーッと眠ってしまった。慶はあいかわらず寝付きがいい。

(慶……)

 慶の温かい頬。温かい手。安心しきったような寝顔。泣きたくなるほど、幸せだ。

 おれは自分の手が冷たいこともコンプレックスの一つだった。心の冷たさが反映されているような冷たい手。大嫌いだった。
 でも……

『お前の手、冷たくて気持ちいい』

 慶がそう言ってくれるから、嫌いだった自分の冷たい手も大切なものに思えるようになった。

『お前の手は、おれがいつでも温めてやるからな?』

 慶はそういって、いつもいつも温めてくれる。四半世紀以上ずっと。

(慶……)

 そっと慶の首の下に手を差し入れて、その愛しい頭をかき抱く。

(慶はいつでもあったかいね……)

 その温かい体温を感じていたら、おれもいつの間に眠っていた。



 翌日……
 朝7時少し前、溝部からラインが来た。なぜか物語風……


『昨晩のことです』

『陽太が寝たあと、二人でソファで酒飲んでる最中、また鈴木が冷房切ろうとしたから、桜井から聞いた話をしたら』

『馬鹿じゃないの?って言われました』

 あ、そうなんだ………

『でも、食い下がって、足温めてやるーって言ったら』

『だったら、足のマッサージして、と言われ』

『昨晩は延々とマッサージをさせられました』

 それはそれで……

『ちょっと楽しかったです』

 だよね。

『しかもクーラー切れって言われなかったです』

 おお!やった!

『今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします』

 (笑)嬉しい報告ありがとう。



「……朝っぱらから何ニヤニヤしてんだ?」
「あ」

 慶の声に顔をあげる。

「おはよう。ごめん。起こした?」

 慶は毎週火曜日は休みなのだ。せっかくの休みだから起こさないように静かに準備をしているつもりなのに、慶はいつも起きてきてしまう。本人曰く「寝ていられない」らしいけど……

「メール? 誰から?」
「溝部。ラインだよ」

 見せてあげようとテーブルの上に置いたのに、慶は見ずにふいっとキッチンにコーヒーを注ぎにいってしまった。

「見ない?面白いよ?」
「どーせノロケ話だろ?」
「まあ、そうだけど……」

 慶はコップを手に戻ってくると、苦笑して言った。

「で、お前もどーせろくでもないこと書いてるんだろ?」
「……………」

 否定はしません。

「見たら文句いいたくなりそうだから、見ない」
「………賢明なご判断です」

 言うと、慶は「やっぱりか」とちょっと笑って、食器を持って立ち上がったおれに手を振った。

「食器そのままでいいぞ?」
「あ、ううん。今日少しゆっくりだから大丈夫」
「え、そうなのか?」

 今はまだ夏休み期間なので、いつもよりも少し遅めの出勤で大丈夫なのだ。

「何時の電車?」
「んー……8時2分でいいかなあ」
「じゃ」
「え」

 ガシッと腕を掴まれた。え、なになに?

「何……」
「風呂」
「え?」

 お風呂? 慶の目がいたずらそうに光っている。

「風呂、一緒入ろうぜー? 汗かいた」
「え……」
「つか、暑くて目、覚めたんだよなー」
「あ……ごめん」

 今朝はそんなに暑くないと思ってクーラー消しちゃったんです……ごめん……暑かったですか……そうですか……

「なんかやな天気だよな。ムシムシしててさー」
「…………」

 浴室に向かいながらTシャツを脱いだ慶。ホントだ。背中にうっすら汗かいてる……色っぽい……。

「………溝部とのライン、今回の議題は、クーラー設定温度の戦い、だったんだけど」
「戦い?」
「うん。今気がついた。希望温度の違いの利点はこんなとこにもあったんだね」
「なんの話……、っ」

 我慢できずに、その色っぽい背中に舌を這わすと、途端に慶が仰け反った。

「浩……っ」
「この汗、そそられる。おいしい」
「………っ、お前、ほんと変態……っ」
「だって、こんな汗……」

 言いかけると、慶はムッとした顔をしてこちらを振りかえり……

「汗かいてんのは、お前がクーラー消したせいだろっ」

 そう言って、噛みつくみたいなキスをしかけてくれた。


 ………この利点についての溝部への報告は、さすがにやめておこうと思う。



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お読みくださりありがとうございました!
これ、今さっきの話!なので、今頃二人はお風呂で……❤
電車乗り遅れませんように~~^^;


9月10日までお休み、と言ったくせに、何をいきなり書いてんだって話なんですけど……
言い訳をすると以下のようになります。

1.「嘘の嘘の、嘘」を読み返していて8月22日が泉君の誕生日だ!ということを思い出した。
2.22日に泉君のお話をアップしよう!と思いつき、ネタもらうために「診断メーカー」なるものをやってみた。
3.そしたら「クーラーの温度設定でもめる」みたいなのが出てきた。
4.でも、泉君たちは揉めないだろうな、と思う。慶と浩介も揉めないと思う。揉めそうなのは溝部&鈴木……
5.揉めた溝部は、浩介たちに相談してくるに違いない……

ということで、上記のお話になったのでした。
泉君33歳のお誕生日おめでとう^^;


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その優しいお心にどれだけ励まされているか……画面に向かって有り難い有り難いと拝んでおります。今後とも、何卒何卒よろしくお願いいたします。

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コメント (3)
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