スタンドで給油をして、リアタイヤクライシスの話を店員のおじさんに告げる。
おじさんはなかなか親身に話を聞いてくれた。
パンクやタイヤ交換の修理は出来るが、タイヤが無い。タイヤを注文して届くまで一週間はかかる。なぜなら、ここは八丈島だから。
おじさんは、マグナのリアタイヤのツルツルな部位をグイグイ押しながら言う。
うん、いけると思うよ。・・・そんなに薄くない。もう少しは走れるよ。
まぁ、そう言われても不安なのは当たり前だ。去年の北海道、まさかバーストするとは思わなかったのだから。まだ大丈夫、が悲劇に変わるまでの時間の短さったらなかった。
そんなストーリーをおじさんに伝えたりもしたのだが、おじさんは言う。
ワイルドにいきましょう。このタイヤで走り切りましょう!
ぴかりーん。
ワイルドにいきましょう。ワイルドに行きましょう。・・・ワイルドに生きましょう。うん、おら、ワイルドに生きるだ。
他にも諸々の事項があったのだが、そこは端折って。
夜は近くの港へ釣りへ。もちろんバイクで。
小さいムロアジを五匹。明日の釣りの餌用に釣った。
陽が暮れて、辺りは闇。釣りの当たりも消えて、辺りは闇。
堤防の上でゴロンと寝転んでみる。夜風が心地いい。闇が濃くなっていくに連れ、夜空に星が浮かび上がってくる。
わぁぁぁ。
そういうことなんだ。バイクのリアタイヤが危機に陥っても。こんなに忙しかったんだよと、なんだかんだ言い訳しても。暑いだ寒いだと、長袖のラッシュガードを脱いだり着たりと繰り返してみても。
あぁ、満天の星空じゃないか。そう、ここには満天の星空があるじゃないか。
あぁ、なんてちっぽけな事であたふたとしているのだろうか・・・僕は。ワイルドにいきましょうよ。ワイルドに走りましょうよ。
なるようになる。なるようにしかならない、その中で。ワイルドにやりましょう。
満天の星空の下より。しんぐ。
おわり。