さらば松井秀喜

ついにこの日が来てしまった。松井秀喜が引退した。残念と同時に彼らしい終わり方だなと思う。松井には長嶋や清原のように派手なセレモニーは似合わない。これでいい。

強くなければ生きられない。優しくなければ生きる価値がない。それを体現している男だった。謙虚で努力家。人格者だった。バッターボックスに立った時の研ぎ澄まされた空気。それだけで芸術だった。

日米合算５０７本塁打。その第１号は１９９３年５月のゴールデンウィークだったと思う。あのものすごい弾丸ライナー。今でも鮮烈な印象が残る。「末恐ろしい男」。清原ファンの自分にとって、いつか取って代わられる日が来るという予感がした。その清原と松井のホームラン数を足すと１０３２本塁打。彼らが描いたアーチは常にチームの勝利に直結し、少年ファンから大人まで夢を与え続けた。

右の清原、左の松井。清原の引退から４年、松井が静かにバットを置いた。怪物たちの時代が終わった。