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ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

深刻顔のキャスター

2015-04-10 23:02:27 | 
重いニュースであろうが

軽いニュースであろうが

そのキャスターはいつでも深刻顔で原稿を読み

まことしやかなコメントを添える

ならば僕のコンタクトレンズが真っ二つに割れてしまったことや

何度、靴紐をきつく縛っても、解けてしまうことについて

その深刻顔で原稿を読み

まことしやかなコメントを添えてほしい

いつものようにね

「他人事ではなく、私も反省しなければなりません」と

その時、僕は彼の深刻顔を芸として認め

心の底から楽しんでやろう
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優しさの行方

2015-04-10 22:55:43 | 
私の優しさはどこにある?

確か階段を上って、突き当たりの部屋にあるタンスの上の箱の中だ

埃まみれの優しさが、まだ息をしているはず


あなたの優しさはどこにある?

見つからないからって諦めないでほしい

まだ身の回りにあるはずだから

よく探してごらん
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最後の教室

2015-04-10 22:49:51 | 
慣れ親しんだ窓際の席に座り、僕は校庭のざわめきを眺めていた
春の陽射しが教室にやわらかく入り込む

汗臭い部室
いくつものシューズの音が鳴り響く体育館
口うるさい教師
自転車の後ろに感じた幸福な重み

3年の日々が、この教室に引き寄せられているようだ
そしてそれらは淡い陽に照らされ、切なく輝いている

僕は椅子を鳴らし、立ちあがった
いい機会ではないか
それらを置き去りにして、教室を出ていこう
苦しくも二度とない愛しい日々を

まぶたに焼きつけて僕はドアを閉めた
待ち構えていた廊下は暗く沈んでいる
僕は卒業したことをはっきり悟った







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時よ

2015-04-10 22:39:55 | 
ためらうこともなく

急ぎ足になることもなく

時は潔く刻み続ける


過去からやってきた少女は

長い旅路を経て、鏡の前にたどり着いた

まもなく、彼女は自らの顔を両手で覆い、涙を流した

時よ、あなたなんだよ

少女に無残な落書きを加えたのは


あなたは美を創り、それを壊し

善を創り、それを壊し

悪を創り、またそれを壊していく


しかしあなたは潔く刻み続ける

ためらうこともなく

急ぎ足になることもなく



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