ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

僥倖少女

2015-06-30 21:43:48 | 

いちばん端のいつもの座席に座り
電車の中を見渡すと
目に留まったのはひとりの美しい少女

うらぶれた街の、さびれた高校への通学途中、突然の僥倖
視線をそらすように窓の外を見た
朝の陽に照らされた古い建物たちが、鈍く輝いている

普段と変わらない風景に飽きて、再び正面を向くと
少女が目の前に立っていた
何と無防備なのだろう
きっと、僕が凝視できないことを知っているから無防備なんだ

話しかけたかった
しかし、少女も話しかけてきそうな雰囲気を漂わせていた
それに甘えて話しかけなかった

日々の対面は時の流れを感じるほど長らく続いた
少女に逢うたびに、僕の朝は優しくなり、素直になりさえもした

そして少女がついに話しかけてきた
「さよなら」
僕の卒業の日だった
言葉を返そうとした時、電車のドアが開き、彼女は姿を消した
コメント
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