ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

赤い傘

2020-05-30 11:32:03 | 
春の終わりの太陽は西の空まで持たない
夏を思わせる強い光は、やがて分厚い雲に覆われる
梅雨が近づくと思い浮かぶ景色

雨に濡れて白い街
路面を優しく叩く均一の音
僕の視線のぼやけた白の中に赤が入る
少しずつそれは大きくなり傘だとわかる
赤い傘に守られた長い黒髪は少し濡れていた
「おはよう」と声をかける彼女の笑顔は眩しく
太陽とはまた違う痛烈な光を称えていた
直視するのは難しく、僕は少し目を細めた

あの頃の夢は見なくなった
赤い傘はもう視線に帰らない

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