とうに日の暮れた公園
サックスの音が聴こえる
哀愁を含んだ音色は
かつての記憶を呼び覚ます
20代の終わりに付き合った人がいた
彼女とも短く終わった
大学を中退してから
僕はフリーターを死守するだけ
彼女は立派に会社員
二人で街を歩くと君はいつも言った
「私が年下の男と付き合っているように写るんだろうね」と
僕がかなり若く見られていたのは確かだった
だから不精ひげを生やしてみたのだが
全然、似合わないと否定されやめた
彼女も20代の半ばを過ぎている
結婚を意識した付き合いをすべきなのだろう
ジェットコースター、旅行、夜景の綺麗なレストラン
それらは僕にとって十分に別れる理由だった
そして、新たな理由が加わったのだ
強くなった北風を合図に僕は公園を離れた
サックスの音が遠くなってゆく
君の声が遠くなってゆく