ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

サックス

2023-12-18 12:56:03 | 

とうに日の暮れた公園

サックスの音が聴こえる

哀愁を含んだ音色は

かつての記憶を呼び覚ます

 

20代の終わりに付き合った人がいた

彼女とも短く終わった

大学を中退してから

僕はフリーターを死守するだけ

彼女は立派に会社員

 

二人で街を歩くと君はいつも言った

「私が年下の男と付き合っているように写るんだろうね」と

僕がかなり若く見られていたのは確かだった

だから不精ひげを生やしてみたのだが

全然、似合わないと否定されやめた

彼女も20代の半ばを過ぎている

結婚を意識した付き合いをすべきなのだろう

 

ジェットコースター、旅行、夜景の綺麗なレストラン

それらは僕にとって十分に別れる理由だった

そして、新たな理由が加わったのだ

 

強くなった北風を合図に僕は公園を離れた

サックスの音が遠くなってゆく

君の声が遠くなってゆく

 

 

 

 

 

 

 

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