何も聞こえない
何も聞かせてくれない
僕の体が昔より
大人になったからなのか
ベッドに置いていた
初めて買った黒いラジオ
いくつものメロディーが
いくつもの時代を作った
思春期に少年から大人に変わる
道を探していた
汚れもないままに
飾られた行き場のない
押し寄せる人波に
本当の幸せ教えてよ
壊れかけのradio
遠ざかる溢れた夢
帰れない人波に
本当の幸せ教えてよ
壊れかけのradio
作詞・作曲 徳永英明。1990年7月発売。オリコン最高位5位。
当時としては大ヒットとまで言えませんが、発売から35年近くたっても根強い人気を誇っています。その理由のひとつは、流行を追わずに描かれた普遍的、本質的な歌詞にあると思います。
「何も聞こえない。何も聞かせてくれない」原因は、ラジオが古くなったことに加えて自らの成長。
「僕の体が昔より、大人になったからなのか」
体と書かれていますが、そこには心が隠されている気がします。大人になったがゆえに失ってしまうものってありますよね。
きらびやかな都会の人ごみで夢を見失ってしまう主人公は「本当の幸せ教えてよ、壊れかけのradio」と心で叫びますが、同時にすでにラジオが教えてくれないことも知っている。その黒いラジオを聞いたまま、眠りに落ちていた頃が幸せだったと気付いているのです。
美しいメロディー、そして徳永さんの少年の面影を残したようなハスキーな高音が、さらにこの曲を昇華させています。