一月十五日(水)晴れ。
寒波の襲来で寒いこと。同じ寒波なら、カンパの方が嬉しいのだが。なんてくだらんことを考えつつ事務所で仕事。昼で終わらして、桜木町駅のすぐ横にある商業ビルの中にある映画館に、今話題の「永遠の〇」を観に行った。
最近の映画館は、チケットを買うのも自販機だ。機械に弱いお年寄りには可哀そうだ、と思いつつ、さも慣れているかを装って機械を操作するが、これが無機質で(機械だから当然か)無愛想で、面倒で嫌になる。「もぎり」のネエちゃんに、愛想よく「いらっしゃいまほー」と挨拶をして貰いたいものだ。
入場料は1800円か、高けーなぁー。と思って画面を見ると「シニア割引」がある。何と1000円だ。ネェちゃんに、「シニア割引で」と言うのも恥ずかしいので、これは助かった。たまには機械も良いものだ。とすぐ転向してしまう自分が情けない。
ウィークデーの昼下がりだと言うのに、席は八割がた埋まっているのには驚いた。以前「007」の最新作を見た時よりも、客が多い。しかし始まる前に興味もない予告編が延々と続くのには閉口した。早送りしてさっさと始めろよ、と思っているのは私だけではあるまい。
その原作を読んだのは二年前の四月のこと。古い読者で千葉在住の中村晃夫さんからご恵送頂いた。以下は、私が本を読んだ時の「白雲去来」である。
「先日、古い読者で、千葉に住んでおられる中村さんから、『是非読んでください』と、『永遠の〇』をご恵送された。題名を見ると、何やらミステリーのようだが、この『ゼロ』とは零戦の事である。終戦から六十年目の夏のこと。特攻で戦死した祖父の生涯を姉と弟が調べることから物語は始まるのだが、読んでいるうちに、どんどんとのめりこんでしまった。最近、こんなにすごい小説を読んだことはない。空戦の場面や、戦記についても史実に基づき、非常に勉強になる。そして、クライマックスでは、泣けて仕方がなかった。本を読んで泣いたことなど、山崎豊子の「大地の子」以来の事である。最近読んだ本の中で、間違いなく最高の一冊だと思う。是非とも読んで頂きたいと思っている。
解説を入れると、六百頁もの本だが、初刷りが2007年の一月で、私が頂いた本は、2010年の5月のもので、五刷も版を重ねている。こういった本が多くの人たちに読まれていることを知ると、まだまだ日本は大丈夫だと思ってしまう。本当に、良い本でした。九百円で感動を得られることなど、最近ではまずない」。ちなみに「零戦」の「〇」は、昭和15年の皇紀2600年に正式採用されたので、2600年の末尾の「〇」をとって「零戦」とした。知っていますよね。
映画の方も、大分評判がいい。早い話が良い映画だった。最近のCGというのは凄いものだ。空母への離着艦の場面や、戦闘の場面もとてもリアルだ。特攻機が、次々と艦砲射撃で落とされる所では涙が溢れて仕方がなかった。零戦が基地に並んでいる場面などは、CGでなければ無理だろう。昔の日活の戦争映画など、零戦と言って自衛隊の練習機などを使用していて、子供心に興ざめさせられたものだ。
特にラストが良かった。孫が宮部のことを回想すると、宮部の乗った零戦が飛んで来て、映像は一転して、宮部の特攻のシーンに代わる。凄まじい艦砲射撃にも関わらす宮部の零戦には一発も当たらない。急上昇から急降下して空母に突入する直前に、「永遠の〇」というタイトルが出て終わる。感動に浸っていたかったが後ろに座っているオバサンたちが、鼻をグズグズさせっぱなしなのには参った。こちらもつられて、涙腺が緩む。明るくなって、目が赤くなっているのを見られるのが恥ずかしいので、タイトルバックが出てすぐに席を立った。
途中、みなとみらいのスーパーで晩酌の肴を買って帰宅。夜は、愚妻の帰りを待ってから家族で食事。愚妻と上の子供には、今日の映画を必ず見るようにと言っておいた。
※入場券。「シニア割引」が嬉しいやら、恥ずかしいやら。複雑な気持ち。