昨日の午後は救急当番だった。救急隊から胸痛の53歳女性の救急受け入れ要請がきた。昼前に夫と車で温泉の日帰り入浴に向かっていたそうだ。急に胸痛が出現して、一時は背部痛もあった。そのままホテルまで行ったが、過換気症候群を呈して手指と下肢のこわばりが出現して、救急要請した。午後3時過ぎに当院に搬入された時、胸痛は当初より弱くなっていた。過換気の症状が思い切り前面に出ていた。少し過換気が治まっても、またすぐにハーハーと大きな呼吸を頻回にしている。手足が痛くてもう夢中になっていた。
心電図でST-T変化はなかった。胸部X線も異常がない。血液検査で白血球数が軽度に上昇していたが、CK-MBは発症6時間後で正常域さった。トロポニンTは陰性で、ラピチェックはわずかに陽性に出た。心筋梗塞が始まっているのかもしれない。とにかく過換気症状が治まらず、何とかしてくれという。ゆっくり呼吸をするように指導してもダメで、話続けるようにして呼吸を早くできないようにするのもダメだった。やむなく安定剤を静注して、多少落ち着いたがまた過換気が始まる。2回目の安定剤投与で落ち着いた時には搬入時から3時間近く経っていた。胸痛について聞くと、胸の奥が少し痛いような気がするという。心電図を再検すると下壁誘導と胸部誘導に一部だけでSTが少し低下しているように見える。循環器科医に診てもらうと回旋枝かもしれないという。すぐに心臓カテーテル検査(病変があればPCI)をすべきだが、当地の方ではない。自宅近くのPCIの得意な救急病院へ搬送することにした。ふだん過換気の既往はなく、胸痛で二次的になったものと思うが、過換気は無視して、さっさとPCIの手配をするのが正解だったのだろう。
(その後の経過)紹介先の病院から返事がきた。たこつぼ型心筋症だったそうだ。心エコーで左室心尖部に全周性壁運動低下があり、左室造影で運動低下が確認された。冠動脈造影では正常冠動脈だった。