なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

穿孔性腹膜炎でした

2012年09月24日 | Weblog

 57歳女性。今日の午前8時半ごろ左下腹部痛が出現して、内科新患外来を受診した。排便直後に発症していた(問診で聞いていたが、この大事なヒントを最初は重視していなかった)。一度嘔吐した。5日前に胃癌健診でバリウムを飲んだが、全部出ていない気がするという。確かに腹部単純X線でS状結腸にバリウムがかなり残っていた。ただし、検査後も毎日ちゃんと排便はあった。腸閉塞ではない。左下腹部に圧痛を認めたが、発熱はなく、血液検査でも全く異常はなかった(これは発症早期のため)。

 患者さんは検査の時のバリウムが残っているから痛んだという解釈だったが、バリウムが残っただけにしてはおかしい。バリウムと関係なく、腸管・尿路・婦人科疾患が起きているかもしれない。バリウムが残っていると腹部CTを撮影してもアーチファクトで読影は困難になると予想されたが、放射線科医と相談して、まずは撮ってみることにした。S状結腸の壁だけではなく、内腔全体にバリウムが溜まっているところもあった。

 さらにバリウムは結腸の外側にも溜まっていた。子宮の背側表面もバリウムが薄く付着している。つまりS状結腸のどこかが破れている。放射線科医に診てもらうと、腹腔内にぽつぽつと遊離ガスがあることをを指摘された。排便時に力んでS状結腸穿孔が起きて、腹膜炎になっていた。放射線科でCT画像を診ている時に外科医が来たので、さっそく相談した。外科医が患者さんを診察して、そこからはスムーズに手術が手配された。いつもの、診断はCTと放射線科医の読影で、治療は外科医というパターンになった。腹部を触診して、すぐに「これは腹膜炎だ」と診断したいものだが、板状硬でもないし、デファンスがあるとも言えなかったしで、画像検査に頼った診断だった。

 (後日談) 翌日外科医に聞くと、S状結腸の真ん中あたりが穿孔していて穴は意外に大きかったという。ダグラス窩にバリウムの塊があったそうだ。腸管内のバリウムと便を切開した腸管から取り出したので、翌日の腹部X線にバリウムはなかった。腸管の炎症・浮腫がひどいと一時的に人工肛門にするということだったが、そうならなくてよかった。

コメント
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