施設の付属診療所で診療している先生から電話が来た。系列のケアホームに入所している精神遅滞の72歳女性が肺炎で発熱があり、入院治療を依頼したいという。以前に入院した呼吸器科のある基幹病院に連絡したところ、満床で断られたという。もともと当院の泌尿器科に勤務していた先生で、いまでも週1回当院の泌尿器科外来に来てもらっている。それほど重症ではなさそうなので引き受けた。
救急搬入された患者さんは体重30Kg台で、体格は小柄で小学生低学年くらいだった。性格はおとなしそうだったが、起き上がろうとするので、常に見守りが必要だった。診療所からは抗てんかん剤と降圧剤・利尿剤が処方されていた。精神科病院からも処方を受けているというが、明日行く予定だったそうで、薬がなくなっていて詳細はわからない。
胸部X線・CT検査をすると、両側肺にもやっとした陰影が広がっていた。ただし酸素飽和度はそれほど下がっていない。誤嚥性肺炎か感冒後の細菌性肺炎併発を想定していたので、意外な結果だった。最初間質性肺炎の陰影かとも思われたが、放射線科医は肺うっ血ではないかという。確かに胸膜直下から広がる陰影ではない。肺門部から末梢へ向かう陰影であり、肺うっ血だった。胸水貯留はごくわずかで、心拡大は軽度か中等度だった。BNPは160で、うっ血性心不全としてよいようだ。肺炎を示す明らかな浸潤影としては指摘できない。白血球数が16000でCRPが7と炎症反応は上昇していた。肺炎球菌尿尿中抗原陽性だが、以前の感染を示している可能性もある。
この患者さんの。両親はすでに亡くなり、兄弟姉妹としては80歳台の姉がいるということだったが、具合が悪いらしい。責任者はその息子になり、今日はその妻が責任者として来ていた。専門病院への転送は希望しないという。入院後の付き添いはいらないというとほっとしていた。気道感染+心不全として、抗菌薬と利尿剤の投与で経過をみることにした。