内科外来に高血圧症・糖尿病・高脂血症で通院している80歳女性が、昨日めまい・ふらつき・脱力で救急搬入された。1週間前からしだいに症状が進行していたが、患者さんから胸痛や息切の訴えはなかった。酸素飽和度が極端に低下していて救急隊が酸素吸入5L/分を開始していた。しかし血液ガスで酸素分圧が50しかなく、救急担当だった外科医が酸素を8L/分に上げたが、酸素飽和度92%とまだ低かった。その外科医から連絡が来て、救急室に診にいった。胸部X線・CTで両側肺に肺うっ血と胸水貯留があった。11年前に左肺癌で左上葉切除術を受けた既往がある。これは治癒としてよいだろう。
心電図でほとんどの誘導でST低下があるが、ST上昇はなかった。BNPは1100と高く、CK-MB・AST・LDHが上昇している。迅速検査のラピチェックとトロポニンTも当然陽性だった。急性心筋梗塞が発症したのかもしれない。心筋虚血から急性に心不全となったと判断した。緊急心カテの適応で、このまま悪化すれば人工呼吸管理になるかもしれないと思われ、心臓センターのある専門病院へ搬送することにした。ちょうど救急隊が別の救急患者さんを搬入したところだったので、搬送を依頼した。
今日搬入後の第一報となる報告がFAXで来ていたが、うっ血性心不全・急性心筋梗塞の疑い・僧房弁閉鎖不全症とあった。心筋虚血も1本の冠動脈だけではない可能性があり、心臓血管外科のある病院へ送ってよかったと思った。