なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

異常酩酊?

2014年11月02日 | Weblog

 首都圏から職場旅行で当地に来ていた50歳代男性が救急搬入された。朝に集合して、バスの中でけっこう飲んでいたそうだ(ビールと焼酎)。もともと毎日飲酒するそうだが、いつもの付き合い酒では特に問題なかったという(普通に酔うということ)。今日はしゃべらなくなり、じっとしていたかと思うと、急に動き出すようになった。ある程度抑えて、声をかけ続けないと勝手に動いてしまう。救急要請されて現場に着いた救急隊もじっとしていないので、バイタルもとれず困ってしまった。病気でないか診てほしいと受け入れ要請が入った。外来患者さんが切れ目なく受診して、外来で点滴しているうちの数人は入院になるという状況だった。異常酩酊というものかと思ったが、これまで診たことがあるような気もするが、よくわからない。とりあえず病院に連れてきて、おいて帰ればいい救急隊と違って、病院は対処しなければならない(心の中の悪態)。

 ある程度目途がつくまで、病院にいますからと救急隊が食い下がってくる。当院しか引き受けることができないのは分かっているので(実質的に当地域唯一の救急病院)、来てもらうことにした。家族に連絡して病歴を聴けるだけ聴くようにと伝えた(病院より救急隊からの方が答えてくれる)。

 病院に来ると、なるほど動き回ろうとする。発語はない。それでも、ひどかった時より少し勢いが治まったそうだ。家族に聴いた話では、高血圧症で通院している。酔うとおかしな状態になることが、これまでもあったそうだ。当院でも酔って救急搬入というのは時々あったが、いかにも酔っていると分かりやすい状態だった。今日の場合は、単に酔っているのではなくて何か病気なのではないか、と思わせる雰囲気が確かにある。ただ、家族の話を聞くと、異常酩酊の範疇なのかもしれない。この患者さんにずっとかかわっていられないので、職場の同僚に監視してもらって経過をみることにした。動き回るので点滴も採血もできなかった(5人で本気になって抑えればたぶん採血くらいはできるが)。

 そのうち、こちらの顔をみて話をするようになった。まだ動きまわろうとはするが。さらに経過をみて、普通の酩酊っぽくなった。少し頭が痛いというので、これ幸いと検査しましょうといって頭部CTをとった。異常なしだった。入院でみるのはむずかしいので、帰宅とした。同僚には迷惑だろうが、今日宿泊予定の温泉旅館で酒を飲まないように見張っていてもらおう。

 精神科救急をやるために精神科病棟を50床に増やしたS市立病院の新病院(525床の大病院)への引っ越しが無事終了した、という記事が新聞に載っていた。ただ、この病院は精神科救急を期待された2名の精神科医が次々にやめてしまっている。大学病院などからの赴任の当てはまったくないそうだ。

コメント
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