79歳女性が内科医院からの紹介で内科新患を受診した。5日前から発熱(37℃台)が続いて、炎症反応上昇もあった。内科医院で点滴(たぶん抗菌薬入り)と抗菌薬(グレースビット)処方で治療していたが、軽快しないということだった。上気道炎症状、腹痛、関節痛、筋肉痛はない。ただ1か月近く前から口内炎(有痛性のアフタが数個)があって、治らないという。もともと元気な方だが、口内炎のせいで食事摂取は少し落ちていた。白血球数12000、CRP12だった。胸腹部CTで肺炎や腹部の異常はなく、尿検査は正常だった(もっとも感染症なら内科医院の処方で修飾されているが)。リンパ節腫脹はない。明らかな心雑音はない。普段は高血圧症、糖尿病で治療を受けているが、HbA1c6.6%とコントロールは良好だった。診たままで言えばヘルペス性口内炎だが、原因なのか結果なのか。
県立がんセンターから42歳男性が紹介されてきた。今年の2月に健診で左肺門異常影を指摘された。内科クリニックを受診して、当院放射線科に胸部CTの依頼が来た(画像のみ)。左肺門部に腫瘤があり、肺癌が疑われると診断された。その内科クリニックから県立がんセンター呼吸器科に紹介になり、肺腺癌と診断された。癌化学療法を受けていたが、効果がなくなり、Best supportive care(BSC)のみとなった。先進状態もしだいに悪くなり、がんセンターへの通院も大変なので、最期は地元も病院で診てほしいという紹介だった。毎度のことではある。左胸壁に肺癌に皮膚転移巣が数個あった。紹介の画像は先月の胸部X線1枚と頭部MRI(脳梗塞と記載されているが、転移か)のみだった。
どのくらい持つのだろうか。若い方なので、当院には呼吸器科常勤医はいない、大学からの応援医師は麻薬処方ができないので内科で経過をみることをお話した。奥さんには、併発した肺炎の治療などは行うが、いよいよとなったらDNRの方針(気管挿管・人工呼吸器管理、心マはしない)ことを伝えた。まだ早いような気もしたが、急変して心肺停止で搬入される可能性もあるので、決めておくことにした。ホスピス入院(がんセンターにある)を選択することもちょっとだけ話をしたが、できるだけ自宅で過ごしたという希望なので、今後の通院から入院まで当院で診ることに決めた。
昨晩は循環器の講演会があって、「心房細動の抗凝固薬療法におけるワーファリンとNOACsの使い分け」の講演を聞いてきた。ワーファリンのTTR(time in therapeutic range)の話が印象的だった。確かに、ワーファリンを処方はしているものの、PT-INR1.6~2.6の治療域に入っていないことが案外ある。共催はエーザイでワーファリンのメーカーだった。副作用の消化管出血(出血性胃潰瘍など)の予防に自社のパリエットをと宣伝していた。