今日は「非器質性・心因性疾患を身体診察で診断するためのエビデンス」を読んでいた。何だか長いタイトルだが、あの洛和会丸太町病院の上田剛士先生の本だ。130ページなので、3時間弱で読めた。症状が心因性かどうか鑑別するための身体所見について、文献検索している。そもそも研究しにくい分野だから、さすがに文献数は少なくようだ。精神科医の推薦の辞にある通り、よくぞここまでと感心(感服)してしまう。
自分は心因性かどうか、それほど気にしないで(困らないで)診療している方だ。それは受診者がほとんど高齢者なので、器質的疾患のことが多いからだろう。また田舎の病院なので、都会の病院とは患者層が違うのだろう。心因性の動悸を訴える患者さんはまたに来るが、筋力低下で受診した方は診ていない。別の症状で受診した若い女性の前腕にリストカットの痕、というのは数例あった。
心因性非てんかん性発作はあった。6~7年くらい前に、他の病院にてんかんとして通院している30歳くらいの女性が痙攣発作で入院した。抗痙攣薬はデパケン(たぶん)。担当は別の内科医だった。数日経過をみて、痙攣の再発はなかった。病棟では、失礼ながらちょっとキャラクターが変だという印象はもっていた。退院予定だった日の午後に、また痙攣が起きた。たまたま午後から担当医が不在だったので(当直明けで帰った)、病棟から呼ばれて診にいった。全身の強直性痙攣だった。生食で血管確保、セルシン静注と指示しているうちに、痙攣は治まった。
そして痙攣が治まるとすぐに携帯電話でメールを打ち始めた。発作後のpost-ictal stateがないことになる。患者さんに言っても仕方ないと思って、看護師さんに向かって「これは本当のてんかんではないんだね」と言った。褒められた対応ではないが、患者さんは予定通り退院していった。本来ならば、そういう症状を引き起こしした事情などを訊いて、精神科へ繋げるべきだろうとは思ったが、とても自分には手に負えないようなオーラを持つ患者さんだった。
その後、何度か痙攣発作で救急搬入された女子高校生がいた。この方の痙攣は、発作中に目を閉じていて、左右交互の運動というわかりやすいものだった。痙攣様の動きが治まると意識障害様だったが、左右から話かけると、眼が話かけている方の反対を向いた。変な不随意運動様の動きをしていたこともある。両親は離婚していて、(子供が4人くらいいて)仕事で忙しい母親にかまってもらえないという事情があった。1年くらい時々来ていたが、そのうちに精神的に落ち着いたらしいという話だった(又聞きだが)。
てんかん講座の中里教授の本や講演では、専門医でも判断が難しい心因性非てんかん性発作もあるらしい。