COPDの75歳男性が内科再来を受診した。昨年の12月31日に、自宅で動けなくなっているのを、訪問した息子が発見して救急要請した。もともとこの方は日中こたつに入って過ごしていて、夜もこたつに入ったまま寝る生活だった。タバコと飲酒はかかさないが、食事摂取はわずかだった。こたつとトイレの間しか動かないので、同居の妻は病状の悪化と認識していなかった。搬入後の検査で、両側肺野に気腫性変化があり、右肺に肺炎をきたしていた。肺炎発症から大分日にちが経過していたらしく、胸水も伴っていた。低酸素血症だが、二酸化炭素は正常域だった。外見は骨と皮で体重は39Kg。
入院後は点滴と抗菌薬投与で肺炎は治癒した。低酸素ではあるが、酸素吸入はすぐに外してしまう。酸素が低いので、中止するわけにもいかない。病棟の看護師さんにどうするかと訊かれたが、病室に行ってはずしている時は必ず付け治すことにして、すぐ外すのは気にしないことにした。入院中はベットの脇に酸素が流れていた。在宅酸素は意味がないので、導入しなかった。
1か月入院して退院した。MSWが介入して訪問看護の手続きをした。退院後はタバコをやめた。正確には、タバコを買ってもらえなくなった。奥さんは頼まれれば買ってきてしまうので、訪問看護の指導のたまものかもしれない。飲酒は継続していた。
その後は、家族が薬だけ取りに来たりして、ご本人の外来受診は2回目だった。食事摂取はさらに減少してきたが、食べないわけではない。低酸素は相変わらずで、入院してはどうかと勧めたが(入院からのなし崩し的な在宅酸素導入狙い)、それは拒否した。外来での在宅酸素の手続きの話をしたが、妻はどうせ付けないからいらないという。飲酒(ウイスキーだそうだ)をやめたくないらしい。死ぬなら自宅で死にたいという希望もある。
外見はすっかり老衰という感じになっている。今時の75歳はもっと色艶がいい。本当にそのうち自宅で亡くなりそうなので、妻と息子にその際は当院の救急室で看取るという話までした。往診で対応してくれる開業医がないし、当院は訪問診療や往診はしていない。