昨日は午後から内科学会地方会の教育講演会に行った。演題は、COPD・CKDにおける電解質異常・NSAIDs不耐性(いわゆるアスピリン喘息)・肺高血圧症・糖尿病だった。
COPDは気流閉塞の話があり、治療は1)LAMAまたは2)LABAを使用して、さらに両者の併用を行う。喘息様の症状があれば3)ICSを追加する。治療によって肺機能低下速度が改善するが、今度は1)呼吸不全(急性増悪)2)肺癌3)心血管疾患への対策が必要になる。また身体活動レベルが低いと予後が悪いので、呼吸器リハが必要になる。安静時に低酸素血症がなくても、運動誘発性低酸素血症(6分間歩行でSpO2が90%未満)があると予後が悪い。急性増悪の治療には、1)抗菌薬2)気管支拡張薬3)ステロイドを使用する。急性増悪の原因として、1)心不全2)気胸3)肺血栓塞栓症にも注意する。
CKDにおける電解質異常は、東海大学の深川雅史先生が講演された。なるほどと思って聞いていたが、後から振り返ると良くわからない。ご自身の著書を宣伝されていたので、ちゃんと読むことにしよう(持ってはいる)。
NSAIDs不耐症の話は興味深く聞いた。専門家はいるものだ(講師の所属する相模原病院はアレルギーのメッカだが)。つまり、シクロオキシゲナーゼCOX1阻害作用を持つNSAIDsによる強い気道症状のこと。アスピリン喘息は誤解を招く表現なので、用語が変わってきて、最新の表現はNSAIDs-exacerbated respiratory disease(N-ERD)になるそうだ。アレルギーと不耐症(非免疫的機序)を合わせて過敏症という。セレコックスが最も安全だが、絶対ではない。ただし、NSAIDs不耐症には気道型と皮膚型があり、セレコックスも皮膚型には安全ではない。アセトアミノフェンは比較的安全だが1回500mg以上は危険で1回300mg以下に留めるのがいいという。ステロイドは内服は安全だが、注射薬はコハク酸エステルは危険で、リン酸エステル(デカドロン・リンデロン)が良い。しかし後者にも添加剤としてパラベンなどがほぼ100%含まれていて、投与する時はゆっくり点滴静注する。オマリズマブ(ゾレア)は最も効果があり、予め使用しておくとNSAIDsを投与しても症状が出ないくらいだという。この辺のことは、倉原優先生の喘息の本にあったので読み返そう。
肺高血圧症は診断がついた時には、まともな肺血管が1/3くらいになっていて予後不良という。胸部X線の肺動脈拡張、心電図の右軸変位・V1・2のR波増高ははっきりしないこともあり、疑ったら心エコーで右室の拡張を確認する。右心カテで平均肺動脈圧が25mmHg以上で確診となる。糖尿病では、エンパグリフロジン(ジャディアンス)の心血管イベント改善(EMPA-REG)に続いて、リラグルチド(ビクトーザ)の心血管イベント改善が発表された(LEADER)。renal eventにも効果があるらしい。
教育講演会が終わってから、ベーリンガー主催の糖尿病の懇話会に出た(65歳からの糖尿病治療)。立派なホテルでの開催で、参加者が最初から決まっているクローズドな会なので、緊張する。講師は福岡大学内分泌・糖尿病内科の野見山崇先生。新進気鋭の先生で、言い切り方が聴いていて気持ちがいい。beyond the BG controlと題して、これまでのとにかく血糖を下げる治療、質のいい(血糖変動を改善)血糖コントロールに続いて、血糖降下以外の効果をも目指す治療にしていくという話をされた。インクレチン関連薬などの糖尿病薬による臓器保護作用・抗癌作用が明らかになってきている。教室の動物実験で、リラグルチドに抗癌作用を認めたそうだ。最近メトホルミンの癌抑制作用が話題になっている。糖尿病薬が動脈硬化や癌の治療に使われるようになるのだろうか。SGLT2阻害薬は、正常血糖のケトアシドーシスをきたすことがあり、注意が必要というこどだった。また、グルカゴン分泌を促進するかもしれないので、最初にDPP4阻害薬を使用した上での使用が好ましいという。使用するとCペプチドが低下して膵β細胞に負担をかけない治療ができること、動脈硬化を改善する効果があることも話された。
DPP4阻害薬の使い分けはあるかと訊いてみた。基本的にはどれも効果は同じとされている、臨床試験で心血管イベントを減少あるいは増加させるという結果が選択に影響するかもということだった。DPP4阻害薬は遺伝子多型の問題で、この患者さんにはこちらの薬が効きにくくてこちらの薬が効くということがあるという。変更してみる価値はある。
ベーリンガーなので、DPP4阻害薬はトラゼンタを、SGLT2阻害薬はジャディアンスを使って下さいという会ではある。病院に来ているMRさんに訊いたら、トラゼンタはDPP4阻害薬の中で売上げが2番目まできたという。