30歳代後半の男性が両親に連れられて昼に内科外来を受診した。5日前の先週の土曜日から高熱があり、月曜日に内科新患(大学からの応援医師担当)を受診していた。インフルエンザ迅速試験でA型陽性で、タミフル内服を処方していた。いったん解熱したが、その後から食欲が低下して意識レベルも低下していた。
四肢末梢のチアノーゼを呈して、外来の看護師さんがすぐに救急室にストレッチャーで運んだ。けいれんしてますと連絡が来て、行ってみると確かにけいれん様だが、すぐに治まってしゃべり始めた。その時発熱はなかったが、悪寒戦慄だったのだろうか。
顔を見ると特徴的な顔貌だった。ダウン症候群ですか、と両親に訊くと、そうだという。循環器科外来に通院していた(処方は強心剤のみ)。肺高血圧症を呈していると言われていたそうだ。普段の胸部X線も心拡大があって、肺血管陰影が目立つようた。酸素飽和度が低いと外来で言われたことがあるらしい。本来は在宅酸素の適応だったのかもしれない(担当医は開業して退職)。熱心に検査した様子はないので、検査してもという気持ちだったのか。
酸素飽和度が低く、段階的に酸素量を上げて、10L/分リザーバー付きになってしまった。胸部X線・CTで浸潤影とスリガラス様陰影が広がっていた。気管支と伴走する肺動脈が拡張していた。血液濃縮で脱水症にもなっている。腎前性腎不全もあった。
治療だけでも大変だが、検査も処置も暴れるのでまずそこから大変だった。ずっと両親がストレッチャーの左右から押さえていた。高次病院呼吸器科に搬送すべきだが、両親は希望せず、当院入院で治療することになった。