なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

感染症学セミナー~性感染症

2017年03月19日 | Weblog

 臨床微生物学会 感染症学セミナー(3月11日)

「性感染症を整理しよう」 自治医科大学感染免疫学講座・笹原鉄平先生 

  性的な接触は性行為(性交)だけでではない(オーラル、アナルも)。パートナーも同時に治療しないと、再感染を繰り返す。性感染症の検査・治療は可能な限り1回で済ませる。複数の性感染症を同時に検査する~血清(梅毒・HBV・HCV)、尿(淋菌・クラミジア)、病理(子宮頸がん)。

 症候は、1)尿道分泌物・排尿痛(尿道炎:淋菌、クラミジア、ウレアプラズマ、マイコプラズマ、腸内細菌科)、2)陰嚢の腫脹・痛み(精巣上体炎)、3)異常帯下(膣トリコモナス症、外陰部膣カンジダ症、細菌性膣症、子宮頚管炎~淋菌・クラミジア)、4)咽頭痛・咽頭違和感(淋菌・クラミジア・梅毒・HSV・HIV)、5)性器潰瘍・口腔潰瘍(痛い潰瘍~HSV・軟性下疳、痛くない潰瘍~梅毒)、6)性器疣贅(HPV感染症~良性:尖圭コンジローマ、悪性:子宮頸がん)、7)下血・血便(腸管感染症:赤痢菌・カンピロバクター・サルモネラ菌、直腸炎:淋菌・クラミジア・性器ヘルペス、ジアルジア症、アメーバ赤痢)、8)陰毛部の痒み(ケジラミ)症。

 性感染症領域の耐性問題 岐阜大学医学部泌尿器科・安田満先生

 問題となる薬剤耐性菌は、1)淋菌(尿道炎・子宮頚管炎・咽頭炎・結膜炎・直腸炎・精巣上体炎・播種性感染症・PID)、2)Mycoplasma genitalium (尿道炎・子宮頚管炎)

 淋菌の検査は鏡検法・培養法(感受性検査)・核酸増幅法、Mycoplasma genitalium の検査は核酸増幅法のみ。

 淋菌性尿道炎の治療は、第一選択がセフトリアキソン(CTRX)ロセフィン1g 単回投与、第二選択がスぺクチノマイシン(SPCM)トロビシン2g筋注 単回投与。セフィキシム(CFIX)セフスパンはもう使えない(3割が低感受性)。

 セフトリアキソン低感受性株は、淋菌性尿道炎への使用は大丈夫だが、淋菌性咽頭炎はギリギリ使えるくらい。淋菌性咽頭炎は、培養陽性でも咽頭所見がない。セフトリアキソンは使用できるが、スペクチノマイシンは咽頭への移行が悪くて使えない。薬剤耐性淋菌は、CDCでurgent扱いでCDI・CREと同じ。

 Mycoplasma genitalium 尿道炎の治療は、第一選択がアジスロマイシン(AZM)ジスロマックSR2g 単回投与(8割くらい効く)、第二選択がシタフロキサシン(CTFX)グレースビット1回100mg1日2回7日間(耐性が出てきた)。(ナイセリア属は淋菌・髄膜炎菌以外は非病原性)。

ケースカンファランス1-播種性淋菌感染症 成田赤十字病院・矢野勇大先生

 46歳男性。主訴は前日からの右手背の疼痛・腫脹。熱感・頭痛・悪寒戦慄もあった。その後複数の関節炎をきたした。血液培養で淋菌が検出。他の性感染症は陰性。(パートナーへの告知・治療は拒否)

 播種性淋菌感染症は、粘膜病変以外から淋菌が検出されるもので、全淋菌感染症の0.5~3%。40歳以下の若年者に多い。症状は、1.初感染(性器感染症、通常無症状、1~2日)、2.菌血症相(非化膿性多関節炎・腱鞘炎・皮疹、移動性の関節痛、血液培養陽性・関節液培養陰性が多い、1~2日)、3.化膿性関節炎相(血液培養陰性・関節液培養陽性が多い)。

 培養検査は、粘膜病変(80%以上で陽性、症状・暴露がなくても検査)、皮膚病変(培養の感度は低いが、PCRはより高い)、関節液(約50%で陽性、PCRはより感度が高い、化膿性関節炎相)、血液(約50%で陽性、菌血症相)。

 治療は、セフトリアキソン1g24時間毎で、治療期間は状態を診ながら1~2週間が推奨される。併存が疑われるクラミジアにアジスロマイシン1g単回を併用。

ケースカンファランス2-先天梅毒 みやぎ県立こども病院・桜井博毅先生

 先天梅毒の診断の難しさは、1.60%の児は無症状で出生、2.培養が難しく血清診断になる(母体からの移行抗体もあり解釈が難しい)。

 RPRで母と比べて児の血清抗体価が4倍以上で診断(しかし感度4~13%、特異度99%)。病歴で疑わしい時は治療。児のFTA-ABS IgMも診断に有用(保険適応外)。

 抗体価の有意な上昇がなくとも、母のRPR/TPHAが陽性の場合、1)母が未治療、2)母の治療が出産の4週間前までに済んでいない、3)不十分な治療(非ペニシリンでの治療)、4)母体の再感染、再燃の可能性がある、5)疑わしい身体所見がある、なら評価と治療を行う。

 症候性梅毒の60%に神経梅毒が合併する。先天梅毒に合併する神経梅毒の40%は新生児期に無症状のため、髄液検査は必須。

 

 性感染症の本を一冊購入したいが、いいものがない?。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする