日直をしていた土曜日の夕方に、80歳代初めの女性が腹痛で救急外来を受診した。下腹部全体のような訴えだったが、腹部は平坦・軟で右側に圧痛があった。臍部の横の当りが痛いらしい。
腹部単純X線ではわからないので、腹部単純CTを行った。血液検査で軽度腎障害があり、造影はし難い。腹膜炎の所見ではないので、単純でわかる範囲でいいと思った。胆嚢に結石があるが、胆嚢炎の所見はなく、その部位に圧痛はないようだ。結腸には所見がなく、虫垂切除の既往がある。CT所見としては、胃幽門輪近傍に不整隆起があり、十二指腸の球部から下行脚で腸管壁が全周性に(特に内側(乳頭側が)不整に肥厚していた。
内科医院に通院していて、P-CAB(タケキャブ)を内服していた。医院はすでにしまっているが、薬手帳に難治性潰瘍と書いた付箋がつけてあった。
十二指腸の壁肥厚が気持ち悪く写っていて、乳頭部癌が広がった可能なども考えた。しかし肝機能検査・血清アミラーゼは正常域で、総胆管の拡張はない。有意な貧血もなかった。
点滴とアセトアミノフェンの点滴静注を行うと、症状は軽快した。入院しますかと聞くと、帰宅すると言われた。週明けの月曜日に外来に来てもらうことにした。
結局、翌日の日曜日にも腹痛で再受診した。日直は消化器科の先生で、そのまま入院になった。今日上部消化管内視鏡検査が行われた。幽門輪にかかる単発の胃潰瘍と、十二指腸球部の十二指腸角から下行脚にかけて、浅い潰瘍が多発していた。胃十二指腸潰瘍には違いないが、ちょっと変則的だった。胃酸の問題ではなく、粘膜血流の問題なのか。
タケキャブは内服していたので、粘膜保護剤を追加するくらいだが、どれほど効くのだろうか。