なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

よくわからない病態

2020年11月04日 | Weblog

  現在内科に入院してリハビリをしている85歳男性の経過。

 

 9月初めに、自宅で転倒し頭部挫創ができて救急搬入された。搬入後に発熱・炎症反応上昇があり、発熱でふらふらして転倒したという経過と思われた。

 肺炎・尿路感染症らしさはなかった。臍部右側の腹痛が軽度にあった。胆嚢結石があるが、明らかな胆嚢炎の所見はなかった。虫垂炎・憩室炎の所見もなかった。

 救急対応した外科医が主治医となって入院した。胆嚢炎疑いとして抗菌薬を投与していたが、4日目の土曜日に下腹部痛が増量して、いったん解熱傾向だったが再度発熱した。

 麻酔科医常勤医がいなくなって、当院外科は緊急手術ができない状況にある(待機手術のみ)。胆嚢炎の悪化の場合対応できないとして、地域の基幹病院消化器内科に転送していた。

 

 (診療情報提供書によると)転院後、胆嚢炎は否定的で、大腸壁肥厚や腸間膜・大動脈周囲のリンパ節腫脹を認めた。保存的に抗菌薬投与を継続したが、その後に敗血症性ショックに陥って、集中治療を行った。

 幸いに病状は軽快したが、経過中に下肢深部静脈血栓症をきたした。(症状の記載はないが、下腿の腫脹や疼痛があったのだろう)抗凝固薬(DOACのエリキュース5㎎錠を2錠分2)を投与して、改善していた。

 約1か月の集中治療で廃用症候群・筋力低下となった。そのまま自宅退院できないため、10月20日に当院内科にリハビリ目的で転院してきたという経緯だった。

 転院後のリハビリで、予想よりもADLはぐっと改善してきた。ただ介護保険申請をしているので、認定待ちになる。

 脳梗塞後遺症で抗血小板薬を内服しているので、抗凝固薬は中止したい。下肢静脈のエコー検査を行うと、観察できる範囲では血栓なかった(当院の技師エコーは優秀)。動きもよくなり、下肢に血栓形成する病状ではもうないので、抗凝固薬は中止とした。

 

 それにしても、9月に発症した疾患は何だったのか。前回の当院入院時のCTに、腸管膜脂肪織の軽度の炎症像と腸間膜リンパ節の軽度腫脹が描出されている。この病態が3日で悪化したのだろうか。そのまま判断すれば、腸間膜脂肪織炎になる。それはステロイドが効くような病態のはずで、敗血症性ショックにはならない気がする。

 重症化した患者さんを集中治療で助けていただいたので、先方の病院には感謝するしかない。どんな病態か確定できず、困惑しながら治療にあたられたのだろう。

 

 

コメント
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