昨日の月曜日の内科新患を37歳女性が、立ちくらみ・動悸・息切れを訴えて受診した。担当医は大学病院から来ているバイトの先生だった。何人かが交代で来ているが、この先生はもう何度か来ている。
症状は今月に入ってからだった。嘔気を感じたことはあるそうだが、腹痛はなかった。便の性状は普通便で血便・黒色便(タール便)は自覚していない。
パニック障害で精神科病院に通院している(処方はSSRIと抗不安薬)。症状が出てから、近くのクリニックを受診して、PPIのランソプラゾール30mgが処方されていた。
血圧111/64mmHg・脈拍95/分・酸素飽和度99%(室内気)・体温36.0℃で、頻脈傾向がある。眼瞼結膜に貧血あり。血液検査でHb5.9g/dl・MCV60.9・血清鉄9μg/dl・血清フェリチン<1.00ng/mlと極端な鉄欠乏性貧血を認めた。
過多月経はないらしい。消化管出血が疑われて、朝食をとっていたが、消化器科に上部消化管内視鏡検査が依頼された。昼前後の検査なら問題はない。
内視鏡検査の結果、胃体上部後壁と胃体下部後壁に胃潰瘍を認めた。出血はなく、潰瘍のステージとしてはH1になる。十二指腸潰瘍はなかった。入院で鉄剤静注を行うことになった。輸血はしないで、経過をみるようだ。
この患者さんは職場の健診を当院で受けている。血液検査でHbが、一昨年は8.2g/dl、昨年は10.6g/dl、今年の1月は9.1g/dlとずっと貧血を認めているが、受診はしていなかった。
消化器科医の判断では、今月初めにクリニックを受診して処方されたPPIが、ぎりぎりのところで効いたのかもしれない。それがなければ、ショックで救急搬入になった可能性がある。
それにしても、血清フェリチン感度以下というのは初めて見たかもしれない。