地域の基幹病院から69歳男性が転院してきた。アルコール依存があり、最近酒量が増えて、肝機能障害が悪化していた。
また、市営住宅の3階に住んでいるが、本人がいうには階段で転倒したという。腰椎の2か所が圧迫骨折を来して、整形外科でも診察されていた。入院後は幻視や言動の異常があり、精神科医も介入して抗精神薬を複数処方していた。
コルセットが装着されて、ベット上の座位保持でも痛い。圧迫骨折の症状が軽減しないと、リハビリも難しい状態だった。
妻は1年前に亡くなって、子供はいない。本人の姉が遠方から来ていた。家族に話をしようとすると、その姉から「(担当医は)先生でしたか」と言われた。「〇〇子がお世話になって」と言う。患者さんの亡くなった妻の名前に聞き覚えがあった。名前で検索して、退院サマリーを確認した。
その妻は一昨年に基幹病院で膵臓癌の手術(膵頭十二指腸切除)を受けたが、断端陽性・リンパ節転移高度だった。術後に癌化学療法を受けていたが、昨年1月に腹腔内リンパ節腫脹が進行して、放射線療法も受けたが、その後は緩和ケアのみとなった。
先方の緩和ケア科は長期に入院できず、といって在宅介護もできないということで、5月に当院に転院してきた。オピオイドの調整で癌性疼痛は軽快して、本来は外来治療でいいはずだが、夫に介護力がなかった(アルコールの問題)。
何度か退院の予定を立てたが、心因性の疼痛も加わり(入院継続が決まると軽快した)、結局11月になくなるまで半年の入院になった。
何故か鎮痛薬の処方がなかったので、当院で追加処方した。リハビリを開始するが、ベット上で少しずつ行うしかない。動けないという理由で尿カテーテルが留置されていたが、これは尿器でいいので抜去予定とした。
自宅退院は難しそうで、アルコールの問題もあり、介護保険申請・施設入所が好ましい。姉は、さんざん迷惑をかけられてきているので、施設入所をいやがったら、もう関わらないと言っていた。
この姉はちょっと特徴的なしゃべり方なので、患者さんの妻が入院している時にも来ていたなあと、思い出したのだった。