なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

急性巣状細菌性腎炎?

2020年12月11日 | Weblog

 火曜日に消化器科医に発熱が続く64歳女性のことで相談された。

 内科クリニックに糖尿病で通院していたが、2年前からピロリ菌の除菌をきっかけに当院消化器科に通院していた。AST・ALTが100前後の脂肪肝とHbA1c9%台の糖尿病があった。

 クリニックではDPP4阻害薬とメトホルミンの合剤(エクメット)を内服していたが、処方を変更していった。現在の処方はDPP4阻害薬とSGLT2阻害薬の合剤(カナリア)とメトホルミン(1000mg/日)で、HbA1cは6.0%前後と良好になっていた。

 今年の7月に股関節置換術を受けていた。また齲歯の治療をしているという既往がある。

 

 先週父親が脳梗塞で地域の基幹病院に入院した。先週末から倦怠感があり、土曜日には38℃の発熱があった。父親が入院している病院の救急外来を受診して、アセトアミノフェンが処方されていた(症状は発熱だけ)。

 日曜日には40℃の発熱があった。月曜は37℃台に低下してたが、発熱が続くということで当院外来を受診した。

 発熱外来の扱いになり、担当医が新型コロナウイルスの抗原検査とインフルエンザ迅速検査を行って、両者とも陰性だった。(周囲にもいないし、濃厚接触者でもないが)発熱外来担当の循環器科医が、外来通院している消化器科医に回したという経緯だった。

 

 白血球11800・CRP36.5と、特にCRPが著明に上昇していたので、びっくりしたらしい。胸腹部単純CTで肺炎はなく、腹部の有意な所見もなかった。尿検査は亜硝酸塩(-)・白血球反応(+)で、沈査は赤血球10-19/HPF・白血球20-29/HPFで細菌(-)だった。尿検査は感染を示唆するような所見だが、細菌(-)で尿路感染症はないと、判断していたようだ。

 メトホルミンを内服していたので、造影CTをするか迷っていた。最終的には造影しないとわからないと判断して、造影CT追加となった。造影CTでは、右腎臓内に造影不良域があった。小腸壁が肥厚しているようにも思えたが、腹痛・下痢はない。

 股関節置換術後であることも気にしていたが、股関節に所見はない。心エコーもしていて、経胸壁だが疣贅は指摘できなかった。

 一通りの培養検査を提出して、入院で抗菌薬を開始することになった(消化器科入院)。通常はセフトリアキソンで開始して培養待ちになるが、ゾシン(PIPC/TAZ)での開始になった。

 

 相談された時には、これまでの経過をわかっていなかった。時間ができた時に、改めて時系列で経過を確認した。SGLT2阻害薬が入っているので尿路感染症のリスクがあった(2年間尿路感染はなかったが)。

 右腎臓内の造影不良域は、放射線科の読影で指摘されて、腎盂腎炎の所見とされていた。尿検査での細菌(-)が合わないが、要するに尿路感染症で、急性巣状細菌性腎炎とすると、全体的に合うと思われる。単純CTでは腎臓内に明らかな低濃度域がないので、腎膿瘍とはいえない。

 入院翌日に38℃の発熱があったが、翌々日からは解熱している。白血球6300・CRP31.5と検査値も軽減していた。食事も開始されて、経過は順調だった。

 

 

 

コメント (1)
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