先週の水曜日に、39歳女性が右下腹部痛の内科新患を受診した。新患担当の内科の若い先生に相談された。
日曜日の夕食後(ラーメン)に心窩部痛が出現して、当院の救急外来を受診した。嘔吐もあった。当直の外科医(大学病院からのバイト)が診察して、プリンぺラン・ブスコパン・整腸剤(ミヤBM)を処方していた。
腹痛が持続して、部位は右下腹部になっていた。水様便が複数回出ていて、症状としては腸炎だった。右下腹部全体に明らかな反跳痛を認める。歩くと同部位にひびくという。筋性防御ありととる人もいるだろうという腹部所見だった。
体温は、36.9℃で微熱程度だった。日曜日は白血球13000・CRP0.1と超急性期の炎症像だったが、水曜日は白血球10700・CRP1.2と、発症3日後経過している割にCRPが上がっていなかった。
腹部造影CTを行っていた。虫垂がわからないということだったが、盲腸から左側に向かって細い虫垂を指摘できた。ごく小さな糞石もあるが、虫垂炎とはいえない。
回腸から上行結腸にかけて腸管壁が浮腫状に肥厚していた。骨盤腔に中等量の腹水があった。心窩部痛から右下腹部痛になる経過や腹水貯留からは、急性虫垂炎が穿孔して腹膜炎を来したものとなるが、虫垂を指摘できたことでうまく否定できた。
CRPが上がらなさすぎるのがわからないが、感染症腸炎として便培養を提出してもらった。通常は抗菌薬なしで経過をみるが、とにかく腹部所見と腹水が目立ちすぎるので、抗菌薬(セフメタゾール)を入れることにした。
入院後は順調に経過して、2日後の金曜日には症状が軽減していた。右下腹部の反跳痛は軽度だった。そして今日は症状消失していた。便培養で病原性大腸菌O8(ベロ毒素陰性)が検出されていた。
病棟再編で今日で閉鎖する病棟に入院していたが、めでたく退院となった。