金曜日に県庁所在地にある県内有数の市立病院から78歳男性が転院してきた。
徐脈頻脈症候群疑いで当院循環器科に、高血圧症・痛風で当院内科に通院していた。病院に来ると陽気にふるまっていた。印象としては、「家族や人に言うことはきかない、頑固な酒とたばこの人」だった。
下腿浮腫が出現するようになり、心臓そのものというよりは慢性閉塞性肺疾患(COPD)・肺性心の症状と判断された。それがきっかけで喫煙はやめたが、飲酒は続けていた。肝機能検査で常にγ-GTPだけが高値だった。
今年の9月に転倒して、頭蓋内出血をきたした。当院救急外来からの紹介で、地域の基幹病院に入院した。診療情報提供書の返事には、外傷性くも膜下出血・慢性硬膜下血種・脳出血・脳挫傷と派手な病名が並んでいたが、保存的に経過をみて軽快していた。不整脈由来なのか、酒に酔っただけなのか不明だった。
その後、飲酒しては転倒することを繰り返したそうだ。息子さん(患者さんと二人暮らし)がいっしょに病院にきて、禁酒するよう説得してほしいと言われた。
飲酒により転倒して頭蓋内出血をきたしたこともあり、禁酒が必要とお話した。やめます、とは言ったが、息子さんにはどれほど効果があるかわからないと伝えた。その後、認知症の症状で困ると息子さんが地域医療相談室に連絡がきていた。病状を確認しないとわからないが、本人に受診の意志がなかった。
12月半ばに動けなくなって、救急搬入された。当直の腎臓内科医(4か月交代で大学から来ている)が診察して、慢性硬膜下血種に急性の出血が加わったような頭部CT像だった。
脳外科のある病院へ搬送しようとしたが、血液検査でBUN100・血清クレアチニン2.24と腎機能障害を認めて、さらに血清カリウムが8.6と著明に上昇していた。心電図では洞調律ではあるが、明らかなテント上T波を認めていた。頭蓋内疾患だけではないので、より高次医療機関へとなって、上記の病院に搬送していた。
幸いに保存的治療で軽快したが、経口摂取は進まなかった。そちらの病院も新型コロナウイルス感染症に対応する中心的な病院でとくかくベットを開けたいということで、当院に転院依頼がきた。
すぐに引き取ることにしたが、転院直前に誤嚥性肺炎を来していったん延期になった。その2日後に解熱したのでと転院依頼がきて、当院で誤嚥性肺炎の治療を継続することにした。