内科の若い先生は内科専攻医の初年度にあたる。所属は医療センターだが、自治医大出身なので、内科専攻医の3年間のうち2年間は地域医療に回される。当院に1年間いて、おそらく2年目は医療センターに戻り、3年目はまた他の地域の病院に出ることになる。
2年目までの症例登録数が決まっていて、1年面の今年度もできるだけ登録数を稼いておく必要がある。当院では、内科各分野にわたって幅広い症例を経験できる。
年度の前半は病院に慣れることもあり、症例登録が進まなかったが、後半になってからは意欲的に登録していた。その中に原発性アルドステロン症の症例があった。
今年の4月から大学病院から腎臓内科医が4か月交代で当院に来ている。大学病院で腎生検を行った患者さん当院に転院して治療継続するようになり、若い先生は腎臓専門医の行う治療をいっしょに経験していた。(腎臓内科医は入院主治医にならないことになっていて、内科医が主治医になっている)
巣状分節性糸球体硬化症、ネフローゼ症候群(膜性腎症)、急速進行性糸球体腎炎(ANCA関連血管炎)などを経験していたので、内科専門医のレベルを超えている。
今年の7月に70歳男性が交通事故で救急外来を受診していた。車の助手席に乗っていたが、右折してきた対向車と衝突してきた。エアバッグが作動していて、前胸部痛を訴えていた。
骨折の有無、内臓損傷の有無を診るために胸腹部CTが行われた。幸い骨折はなかったが、そのCTで右副腎腫瘍を指摘された。
45歳から高血圧症で治療を受けていた。降圧薬はCa拮抗薬とサイアザイド系利尿薬が処方されていた。他に糖尿病、高脂血症、高尿酸血症もあった。
内分泌検査で血漿レニン活性が感度以下で、血漿アルドステロン濃度が126pg/ml(>120pg/ml)と高値だった。アルドステロン・レニン比は当然>200になる。カプトリル負荷試験が行われて、血漿レニンは抑制されたままで、血漿アルドステロンは抑制されなかった。
原発性アルドステロン症疑いで大学病院に紹介されて、副腎静脈サンプリングで確定診断された。副腎線種摘出術が行われたのだった。
高血圧症の6%は本疾患と報告されているので、日常診療でけっこう見逃しているのかもしれない。