なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

自己免疫性膵炎

2020年12月19日 | Weblog

 水曜日に63歳女性が内科外来を受診した。その日は内科の若い先生が担当していた。肺炎はなく、尿混濁と炎症反応の上昇を認めて急性腎盂腎炎が疑われた。

 消化器科に自己免疫性膵炎と糖尿病で通院していた。自己免疫性膵炎はプレドニン5mg/日が継続処方されている。糖尿病はDPP4阻害薬とSGLT2阻害薬の合剤(カナリア)とSU薬(グリミクロンHA20㎎錠)の処方で、HbA1cが7.5~7.9%だった。

 月曜日に消化器科の外来を定期受診していて、尿黄濁と炎症反応の軽度上昇はすでにあったが、発熱はなかった。月曜日は白血球12900(ふだんもプレドニン内服なので10000前後)・CRP4.0(ふだんは陰性)で、すでに炎症は始まっていた。

 水曜日は白血球21300・CRP41.4と急激に上昇していた。CTでは右腎臓周囲の脂肪織が若干濃度上昇があるのかもしれない。腎膿瘍はない。急性腎盂腎炎として入院治療となった。(造影すると腎臓に造影不領域が出たかもしれない)

 

 自己免疫性膵炎は珍しいので、どういう経緯で診断されたか興味があった。2008年に受診した時に、血液検査で高グロブリン血症を認めた。多発性骨髄腫が疑われて、当時いた腫瘍内科医が入院で精査していた。

 しかしM蛋白は認めず、多クローン性高γグロブリン血症だった。骨髄穿刺もしていたが、軽度の形質細胞増加のみで、骨髄腫とはいえなかった。

 その後は腫瘍内科医が地域の基幹病院に転勤になり、そちらでフォローしていたらしい。医療センター消化器内科に紹介となり、自己免疫性膵炎の診断と治療が行われた。2014年に医療センターから当院消化器科に紹介されて、現在まで通院をしている。

 2008年に当院で撮影した腹部造影CTを読み直してみた。膵臓全体が腫脹していて、その周囲に低濃度の被膜様構造capsule-like rimが取り囲んでいる。

 今なら自己免疫性膵炎を疑ってIgG4測定から診断できると思うが、2008年当時IgG4関連疾患はまだ一般に認識されていなかった。内科全般に詳しい腫瘍内科の先生もすぐには思いつかなかったようだが、その後に気づいたのだろう。

 入院後は、尿路感染症を起こしやすいSGLT2阻害薬を中止した。カナリア配合錠=SGLT2阻害薬カナグル+DPP4阻害薬テネリアをテネリアのみに変更。

 

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