昨夜の当直医だった神経内科医に、昨夜受診した41歳女性の診察を頼まれた。発熱と右季肋部痛で受診したそうだ。胆嚢炎を疑ってCTを撮影したところ、(胸腹部で施行したので)思いがけなく肺炎があったそうだ。
白血球数6300、CRP1.8mg/dlと炎症反応は軽度上昇のみで、肝機能は正常だった。子供が小さいので(小学校低学年2人)外来治療を希望したので、抗菌薬の点滴を而して帰宅とした。今日また外来に来るように言ってある。
外来で話を聞くと、1週間前から微熱があった。咳・痰はなかった。昨日は38℃台の高熱になったので、内科クリニックを受診した。症状が発熱だけで、アセトアミノフェンのみ処方された。夜になって右季肋部痛も出て、発熱もあるので当院を受診したそうだ。胆嚢結石は健診で以前指摘されていて、時々右季肋部痛があったが、短時間で治まるので受診はしていなかった。
今日は腹痛はなかった。やはり外来で治療したいという。胸部X線だけだと、見逃すかもしれないが、心陰影の裏側に陰影がある。炎症反応からはマイコプラズマ肺炎が疑われたが、咳は昨日から出始めたという。それほどひどくはない。腹部エコーを行って、胆嚢内に結石が充満しているが、明らかな壁肥厚はなかった。腹部は平坦・軟で右季肋部にごく軽度に圧痛がある。腹痛(自発痛)もないので、胆嚢炎とはいえない。
抗菌薬内服で経過をみることにして、思わしくない時に治療にすることにした。抗菌薬はニューキノロンにしたが、オグサワ+マクロライドが正しかったのだろうか。
病院職員(派遣の看護助手さん)の44歳女性が、昨日インフルエンザ予防接種を受けた左上腕が腫れてしまった。注射部位を中心に10cm×7~8cmと広範だった。浮腫状で局所の熱感がある。皮膚科の先生と相談したが、あまり診たことはないと言われた。いきなり蜂窩織炎は考えにくいので、アレルギー反応でしょうかという。抗アレルギー薬と塗り薬で経過をみて、また見せてもらうことにした。
昨日内科クリニックから88歳女性が「多関節炎・血小板減少」で紹介されてきた。そのクリニックの先生は心臓外科医で、高血圧症などで通院していた。6月から両肩・肘・膝関節痛があり、整形外科クリニックを受診したとある。そこでリウマチ性多発筋痛症と診断されて、プレドニン5mg/日が処方されていた。その後内科クリニックで同量が継続されている。
10月に内科クリニックが休診で、別のクリニックを受診した際に、血液検査で血小板減少(6万)を指摘されて報告が来たそうだ。再検しても血小板減少は同じ。
そういう経過での当院受診だった。88歳だが、ちゃんと歩いて診察室に入ってきた。両肩が痛いという。両上肢の拳上が困難だった。両手・両手指関節が腫脹しているように見えるが、圧痛はなかった。両膝も痛いというが、歩行はできるのでそれほどではないようだ。X線では変形性膝関節症のようだ。足関節・足趾関節は異常がない。肩・上腕・大腿の明らかな把握痛はなかった。経過を通して発熱はないそうだ(あっても微熱なのだろう)。朝に両手のこわばりが1時間以上ある。
白血球5600で分画に異常はない。血小板は4.2万と減少している。Hb8.8g/dl(MCV111.7)で貧血があるが、慢性炎症のためか骨髄の問題かわからない。CRP4.0g/dlで血沈が119mm/時。RFは陰性。抗CCP抗体と抗核抗体(外注)を提出した。治療されていないが、HbA1c7.4%と糖尿病だった。もともとなのか、プレドニンによるものか。
リウマチ性多発筋痛症を中途半端に治療した状態のようにみえるが、血小板減少は何だろうか。抗血小板抗体とPAIgGの提出しておいた。外注検査の結果が出るまでNSAID(セレコックス)だけ出しておいた。
2週間前に消化器病センターのある病院に救急搬送した89歳女性が今日転院してきた。意識障害・血圧低下(60mmHg)で救急搬入されて、検査の結果は総胆管結石・急性閉塞性化膿性胆管炎・敗血症症ショックだった。一番近い基幹病院はベットがなく、そちらの病院に依頼したが、やはりベットがないので救急のベット(外来扱い)で診ますということだった。申し訳ない思いで搬送させてもらった。
すぐに内視鏡的胆道ドレナージが行われていた。胆管ステントを挿入したが、流出が悪いので経鼻胆道ドレナージ(ENBD)が追加されていた。その後内視鏡的に総胆管結石2個が摘出された(専門的な2種類の器具名が記載されている)。血液培養でESBL産生菌が検出されて、抗菌薬はゾシンからメロペネムに変更されていた(菌血症なので2週間投与)。
年齢の割に認知症もなく、口の達者な方だったが、さすがに2週間の治療で足腰は弱ってしまった。息子夫婦・孫と同居しているが、日中は一人になるので、トイレまで歩けるようにしてほしいという家族の希望だった。こういう、さもない入院は当院は得意としている(?)ので、昨日主治医から連絡がきて、今日すぐに引き取った。
それにしても、よくあのショックの状態から治したものだと感心する。夕方午後5時に当院から搬送したので、高速道路を救急車で行って1時間後に到着する。それから内視鏡処置をしている。当院でできるのは、治ったらすぐに引き取ってベットを有効に活用してもらうことくらいだ。
家族のこともずけすけと話をする患者さんで(オレの年金を使っているんだ、など)、看護師さんが面白がっていた。今回初めて介護保険を申請するので1~2か月の入院になりそうだ。
学会出張で不在の間に、ツツガムシ病の患者さんが入院していた。今日感染管理ナースから報告が来て、すでに保健所に届け出ていた。
患者さんは67歳男性で、山での作業を行った約2週間後に症状が出現した。発熱・全身の発疹(紅班)・関節痛が出現した。翌日に高血圧症で通院し始めたばかりの町立病院を受診した。左側胸部に刺し口を認め、ツツガムシ病疑いとなった。ミノマイシンを投与して、そのままそこで診てもいいと思うが、自信がなかったのか面倒なことをしたくなかったのか当院に紹介された。
当院の内科医が外来で診て、血液検査で炎症反応上昇(白血球数は正常域でCRPが3.7)と肝機能障害(AST130・ALT95)を認めた。そのまま入院して、ミノマイシン200mg/日に内服で経過をみて、症状は軽快した。検査値も改善(CRPは陰性化)して、今日退院していた。外注の検査でIgM抗体(Karp型・Gilliam型・Kato型)がいずれも陽性になっている。1週間分のミノマイシンが退院時処方として出されて、来週もう1回外来で確認することになっていた。
そういえば先週もツツガムシ病の患者さんがいて、その方はどうしても入院したくないと言って外来治療になっていた。2週続けてツツガムシ病というのは、たまたまだろうが珍しい。見事に治るものだ。ミノマイシンは偉い。
一昨日の日直の時に95歳の女性が受診した。いつもと比べて食欲がなく、全体的に調子が悪いという。連れてきた家族(嫁も普通の高齢者)は脳梗塞が心配ということだった。
38℃台の発熱があったので、感染症による症状が疑われた。咳・痰はなく、頭痛・胸痛・腹痛・関節痛もなかった。足がちょっとむくんでいるという。左足関節の少し上が淡くピンク色にだった。分厚い靴下を脱いでもらうと、左足全体が発赤・腫脹して、圧痛があった。蜂窩織炎だった。足は痛いのかと訊いても、そういえば少しおかしいというくらい。
血液検査で白血球数増加(18000)・CRP上昇(18mg/dl)があった。肺炎・尿路感染がないか検査したが、異常はなかった。蜂窩織炎だけのようだ。爪白癬はあるが、足白癬はない。明らかな傷は認めなかった。
年齢的には入院治療と伝えたが、入院はしたくないという。外来で点滴を始めていたので、抗菌薬(セフトリアキソン)を1回入れることにした。食事摂取ができるなら、外来で抗菌薬内服でやってみて、思わしくなければ入院にするのもあるか。しかしその後、熱が40℃まで上昇して、家族もこれでは連れて帰れないと言う。そのまま入院にした。血液培養を取っておけばよかった。
翌朝(昨日朝)には解熱傾向となり、朝食は全量摂取だった。まあ何とかなりそうだ。
化学療法学会で見た「感染症内科ただいま診断中!」(伊東直哉著・中外医学社刊)を購入。肺炎・尿路感染症は省いて、「胸水・腹水貯留患者の診断アプローチ」を詳しく記載してあり、なかなか他書にはない特徴がある。著者は2007年卒の若い先生だ。(学会場で購入しないのは荷物が重くなるから)来年早々に講演依頼をする予定があり、学会では関雅文先生の講演を聴いた。もし来てもらえる時にはサインをもらうため、講演で宣伝していた「抗菌薬おさらい帳」(じほう刊)も購入した(薬剤師さん向けの本)。
昨日の日直の時に、84歳男性が発熱で救急外来を受診した。救急車ではなく、家族が連れてきた。4日前の10月30日に内科外来を受診して、11月1日神経内科外来(新患)に回されていた。
今年になってから歩行がおぼつかなくなった。半年前からは目に見えてやせてきて、2か月前からは食事の嚥下が難しくなっていた。神経内科外来では、筋委縮性側索硬化症疑いとなった。1週間後に再受診して、その後は基幹病院神経内科で精査予定と記載されていた。
たぶんその時にも肺炎があったのだろうが、発熱に気づいての救急外来受診だった。右肺下葉背側に浸潤影が広がっている。上葉にも陰影がある。誤嚥性肺炎をきたしていた。
入院してまずは肺炎の治療を開始する。神経内科としては、この後どのような検査があるのだろうか。胃瘻造設まで当院で行うべきか、相談してから決めることにする。喀痰の自力排出は困難だろうから、肺炎は難治になるか。
10月31日から11月2日まで日本化学療法学会東日本支部会(感染症学会と合同)に参加してきた。午前8時30分から開始なので、楽をしようと京王プラザホテルに宿泊したが、新宿西口駅前の他のホテルでもよかったかもしれない。明日からすぐ役立つということではないが、感染症ではこういうことが話題になっているのか、と感じて帰ってきた。今年の学会出張はこれで終わり。
今日は日直で病院に出ている。68歳女性が施設から発熱・呼吸困難で救急搬入された。当院の神経内科外来に通院している。パーキンソン病の処方と認知症の処方が出ている。レビー小体型認知症の病名が付いている。普段は自力歩行可能で、会話もできるそうだ。
救急隊が酸素吸入8L/分にしていたが、酸素飽和度は90%に満たない。10L/分にしたが、やっと90%くらいだった。血液ガスでもそれに一致する酸素分圧しかなかった。看護師さんが喀痰吸引をすると、淡黄色の痰が大量に引けた。吸引が刺激になってさらに痰が出てくるのはいいが、酸素飽和度が下がるので、様子を見ながらの吸引になった。
胸部X線ではそれほどの陰影でもないようだったが、胸部CTで見ると、左下葉に浸潤影があり、両側肺全体に淡いスリガラス様陰影が広がっていた。二酸化炭素糞分圧は低下している。
やせた方で、努力呼吸で疲弊してしまいそうだ。68歳という年齢であり、まだ重症肺炎になった時にどこまで治療するかという話にはなっていないようだ。気管挿管・人工呼吸の適応なので、呼吸器内科で本格的に診てもらうため、基幹病院に救急搬送した。看護師さんが同乗して行ったが、出てきた呼吸器内科の先生が、「どこまで治療するか」と言っていたそうだ。