月曜日に地域の中核病院救急科から68歳男性が転院してきた。住所は東京になっているが、ずっと当地にある実家に住んでいる。母親が亡くなった後は、一人暮らしをしていた。11月の始めに胸背部痛を主訴に救急搬入されたとある。
搬入時はショック状態で、アルコール性ケトアシドーシス・低血糖(50mg/dl)・腎障害と高カリウム血症・高尿酸値血症と診断された。「大酒家突然死症候群」の一歩手前の状況と、紹介状に記載されていた。
治療により改善したが、今度はアルコール離脱せん妄となり、ジアゼパムやミダゾラムの投与を要した。さらに誤嚥性肺炎からCO2ナルコーシスを来して、気管挿管・人工呼吸を要した(4日後に抜管)。回復後に頭部CTを行うと左小脳梗塞も発症していた。
肺炎として治療しても炎症反応が改善しないと思っていたところ、回盲部膿瘍と判明した。抗菌薬変更で保存的に治療して、何とか治まったそうだ。
転院時は、経鼻胃管で経管栄養が行われていて、尿カテーテルが留意されていた。転院して来ると言っている内容はめちゃくちゃだが、会話はできる。普通に経口摂取できそうで、ST評価でも嚥下に問題なしとされた。今日から経口摂取を開始して(NGチューブは抜去)、尿カテーテルも抜去した(多分管理上の挿入)。
転院依頼があってから、病院は病棟再編をしていて、いつもより引き取るのが遅くなった。その間に依頼があった時より病状が改善していたのだろう。
転院後は体幹抑制と両手ミトン装着だったが、両手のミトンは外した。体幹抑制はしないと危ない。饒舌で天皇陛下の話が出てきたりして、内容は理解はしがたい。
先方の病院には精神科医がいて、介入していた。ロゼレム・デジレル100mg・デパケン・ジプレキサ5mg・ロナセンテープ40mgと盛りだくさんに処方されていた。
ここまで来ると、意識障害ではなく認知力障害になる。運動失調はあるが、不安定ながら歩行はできるはずで、かえって危ない。自宅退院は難しく(最終的にそうなるかもしれないが)、施設入所もどうか。精神科病院入院も考慮する必要があるかもしれないが、入院は同意しないだろう。
「大酒家突然死症候群」は耳慣れない言葉だが、大酒家が突然死して、解剖をしても死因を特定できない場合に使用される。実態は、低体温・低血糖・代謝性アシドーシス(アルコール性ケトアシドーシス)・不整脈などが起きているらしい。
患者さんは先方の病院を非難していた(いろいろ抑制されたからだろう)。死にかけたところを助けてくれた、と伝えたが、理解はしていないようだ。