なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

胸水の増加

2020年12月21日 | Weblog

 右肺尖部に陰影があり、喀痰の抗酸菌染色で陽性となった82歳男性のその後。

 入院時に白血球10700・CRP0.0で、炎症反応は初期像と思われたが、その後白血球数は8200、4900と低下したが、CRPは0.0のままだった。

 右肺炎・肺炎随伴性胸水あるいは胸膜炎として、抗菌薬(ABPC/SBT)を投与していたが、感染症ではないと思わせる経過となった。右胸水が増加して、酸素吸入を要するようになった。(左から、入院時、先週末、今日)

 担当の内科の若い先生が腫瘍マーカーを提出すると、CEAは正常域だが、CA19-9が297と上昇していた。肺癌・癌性胸膜炎しては進行が速すぎる気がするが、癌性胸膜炎なのだろうか。

 大学病院呼吸器内科から地域の基幹病院呼吸器内科に数か月交代できている若い先生が、週に1回当院の外来を手伝いに来ている。相談すると、やはり癌にしては速いということだったが、早急にドレーン挿入を要するので、すぐに転送することになった。

 癌性胸膜炎ならば、胸水を引いた後に胸膜癒着術になるのだろうか。診断と方針が決まったら、当院に戻ってくると思う。

 

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心肺停止

2020年12月20日 | Weblog

 水曜日は外科の女性医師が当直だった。準夜帯から深夜帯にも救急外来受診があり、毎回よく「当たる」先生だ。

 8時30分通常診療開始前に、心肺停止の81歳女性が救急搬入された。朝にゴミ出しに自宅の外に出て、倒れたそうだ。居合わせた人が呼びかけても反応がなく、救急要請をした。救急隊が到着するまで、心臓マッサージ(胸骨圧迫)をしてくれていた。

 救急隊到着時、心肺停止で瞳孔散大・対光反射なしだった。心電図では心静止asystole。心肺蘇生を行って、点滴とアドレナリン1A静注もしていた。救急車内で心静止からPEA(無脈性電気活動)になった。

 搬入後の血液ガスで低酸素血症だったが、すぐに気管挿管を行って正常化した。アドレナリン3Aを入れたところで自己心拍が再開した。12誘導心電図は正常洞調律でST-T変化や不整脈はなかった。救急室で行った心エコー所見も正常だった。

 自発呼吸は戻らず、人工呼吸器を装着した。血圧が安定したところで、頭部~腹部のCT検査が行われたが(人工呼吸をしながら)、頭蓋内疾患(くも膜下出血・脳出血)はなかった。

 通常は脳の問題か心臓の問題になるが、両者とも異常がないと(発症時の致死的不整脈は否定できないが)、心肺停止に陥った原因は不明になる。Dダイマーは上昇していたが、心肺停止後なのでなんともいえない。重症の肺血栓塞栓症では急変がありうるか。

 胸部CTで右気胸があり、心肺蘇生の影響かもしれない。両側肺の背側にべったりとした浸潤影様の陰影があり、そのまま解釈すれば両側肺炎になる。心肺蘇生術の影響としがたい気もするが、突然倒れるまでには普通だったので違うのだろうか。(炎症反応も陰性だった)

 家族と相談すると、できるだけの治療をしてほしいと希望された。地域の基幹病院救急科に連絡して、救急搬送となった。人工呼吸器を装着したままでの搬送で、内科の若い先生に救急車に同乗した。搬送後に病院の人工呼吸器を回収するため、救急車の後から病院車が追いかけることになった。

 

 何年か前に中年男性が心肺停止で救急搬入されて、自己心拍が再開した。人工呼吸をして基幹病院に搬送して、その後低体温療法を受けて歩いて退院したという症例があった。搬送時に自発呼吸が出始めていて、見込みがありそうだった。今回は厳しそうだが、どこまで頑張れるのだろうか。

 

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自己免疫性膵炎

2020年12月19日 | Weblog

 水曜日に63歳女性が内科外来を受診した。その日は内科の若い先生が担当していた。肺炎はなく、尿混濁と炎症反応の上昇を認めて急性腎盂腎炎が疑われた。

 消化器科に自己免疫性膵炎と糖尿病で通院していた。自己免疫性膵炎はプレドニン5mg/日が継続処方されている。糖尿病はDPP4阻害薬とSGLT2阻害薬の合剤(カナリア)とSU薬(グリミクロンHA20㎎錠)の処方で、HbA1cが7.5~7.9%だった。

 月曜日に消化器科の外来を定期受診していて、尿黄濁と炎症反応の軽度上昇はすでにあったが、発熱はなかった。月曜日は白血球12900(ふだんもプレドニン内服なので10000前後)・CRP4.0(ふだんは陰性)で、すでに炎症は始まっていた。

 水曜日は白血球21300・CRP41.4と急激に上昇していた。CTでは右腎臓周囲の脂肪織が若干濃度上昇があるのかもしれない。腎膿瘍はない。急性腎盂腎炎として入院治療となった。(造影すると腎臓に造影不領域が出たかもしれない)

 

 自己免疫性膵炎は珍しいので、どういう経緯で診断されたか興味があった。2008年に受診した時に、血液検査で高グロブリン血症を認めた。多発性骨髄腫が疑われて、当時いた腫瘍内科医が入院で精査していた。

 しかしM蛋白は認めず、多クローン性高γグロブリン血症だった。骨髄穿刺もしていたが、軽度の形質細胞増加のみで、骨髄腫とはいえなかった。

 その後は腫瘍内科医が地域の基幹病院に転勤になり、そちらでフォローしていたらしい。医療センター消化器内科に紹介となり、自己免疫性膵炎の診断と治療が行われた。2014年に医療センターから当院消化器科に紹介されて、現在まで通院をしている。

 2008年に当院で撮影した腹部造影CTを読み直してみた。膵臓全体が腫脹していて、その周囲に低濃度の被膜様構造capsule-like rimが取り囲んでいる。

 今なら自己免疫性膵炎を疑ってIgG4測定から診断できると思うが、2008年当時IgG4関連疾患はまだ一般に認識されていなかった。内科全般に詳しい腫瘍内科の先生もすぐには思いつかなかったようだが、その後に気づいたのだろう。

 入院後は、尿路感染症を起こしやすいSGLT2阻害薬を中止した。カナリア配合錠=SGLT2阻害薬カナグル+DPP4阻害薬テネリアをテネリアのみに変更。

 

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抗酸菌塗抹陽性

2020年12月18日 | Weblog

 火曜日に施設嘱託医をしている内科クリニックから82歳男性が肺炎疑いで救急搬入された。右肺炎・胸水貯留を認めて、救急当番の腎臓内科医から内科の若い先生に入院依頼された。

 パーキンソン病の既往があり、2年前にも肺炎で入院して、当時いた内科の若い先生が担当していた。吸引で喀痰培養を提出して、スルバシリン(ABPC/SBT)で治療を開始した。

 細菌検査室から、喀痰塗抹で抗酸菌がいるので抗酸菌検査(検査オーダー)も提出して下さい、と連絡がきた。抗酸菌もグラム染色でうっすら見えて、すでに抗酸菌塗抹検査を開始していた。その後、ガフキー2号ですと報告がきた。

 右肺尖部に複数の小空洞、というより気管支拡張を伴う病変を認めていて、2年前の入院時より少し陰影が増加していた。全体が肺結核・結核性胸膜炎か、結核or非結核性抗酸菌症(NTM)and通常の(誤嚥性)肺炎と随伴性胸水、ということになった。

 PCR検査と培養検査を提出して、個室隔離としていた。PCR検査の結果は結核菌のPCR陰性・Mycobacterium aviumのPCR陽性だった。塗抹で抗酸菌が見える良質な喀痰の検査結果なので、追加検査はしない。個室隔離を解除して、通常の肺炎の治療を継続となった。

 呼吸器科外来に来ている先生に診てもらったが、NTMの陰影といわれた。見る人が見ればという結果だが、ここは慎重に対応しておきたい。

 入院後に酸素化は改善して、酸素吸入は中止となった。経過良好だった。M.aviumは経過観察になる。

 

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原発性アルドステロン症~副腎線種

2020年12月17日 | Weblog

 内科の若い先生は内科専攻医の初年度にあたる。所属は医療センターだが、自治医大出身なので、内科専攻医の3年間のうち2年間は地域医療に回される。当院に1年間いて、おそらく2年目は医療センターに戻り、3年目はまた他の地域の病院に出ることになる。

 2年目までの症例登録数が決まっていて、1年面の今年度もできるだけ登録数を稼いておく必要がある。当院では、内科各分野にわたって幅広い症例を経験できる。

 年度の前半は病院に慣れることもあり、症例登録が進まなかったが、後半になってからは意欲的に登録していた。その中に原発性アルドステロン症の症例があった。

 今年の4月から大学病院から腎臓内科医が4か月交代で当院に来ている。大学病院で腎生検を行った患者さん当院に転院して治療継続するようになり、若い先生は腎臓専門医の行う治療をいっしょに経験していた。(腎臓内科医は入院主治医にならないことになっていて、内科医が主治医になっている)

 巣状分節性糸球体硬化症、ネフローゼ症候群(膜性腎症)、急速進行性糸球体腎炎(ANCA関連血管炎)などを経験していたので、内科専門医のレベルを超えている。

 

 今年の7月に70歳男性が交通事故で救急外来を受診していた。車の助手席に乗っていたが、右折してきた対向車と衝突してきた。エアバッグが作動していて、前胸部痛を訴えていた。

 骨折の有無、内臓損傷の有無を診るために胸腹部CTが行われた。幸い骨折はなかったが、そのCTで右副腎腫瘍を指摘された。

 45歳から高血圧症で治療を受けていた。降圧薬はCa拮抗薬とサイアザイド系利尿薬が処方されていた。他に糖尿病、高脂血症、高尿酸血症もあった。

 内分泌検査で血漿レニン活性が感度以下で、血漿アルドステロン濃度が126pg/ml(>120pg/ml)と高値だった。アルドステロン・レニン比は当然>200になる。カプトリル負荷試験が行われて、血漿レニンは抑制されたままで、血漿アルドステロンは抑制されなかった。

 原発性アルドステロン症疑いで大学病院に紹介されて、副腎静脈サンプリングで確定診断された。副腎線種摘出術が行われたのだった。

 高血圧症の6%は本疾患と報告されているので、日常診療でけっこう見逃しているのかもしれない。

 

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脂肪肝炎?

2020年12月16日 | Weblog

 内科新患を診ていた内科の若い先生に相談された。患者さんは、昨年7月から通院している糖尿病・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の36歳代女性だった。

 統合失調症で精神科クリニックに通院していた。検査で血糖高値(Hb8.8%、随時血糖318mg/dl)と肝機能障害があった。(もっと以前からあったと思うが、記載はない)

 当院受診時、HbA1c9.0%で、肝機能障害はAST 142・ALT 200・LDH 325・γ-GTP 130だった。画像上は明らかな脂肪肝だった。皮下脂肪・内臓脂肪ともに著明だった。身長162cm・体重117kgと肥満がある(BMI 44.6)。(放射線科は、読影レポートは肥満・脂肪肝とシンプルな記載だった)

 メトホルミンとDPP-4阻害薬でHbA1cは順調に改善して、今日はHbA1c7.3%とまだ下がり続けていた。しかし肝機能障害がAST 172・ALT 285・LDH 298・ALP 111・γ-GTP 169とむしろ悪化していた。見た目の印象では、初診時よりも体重増加しているらしい。

 ここまでの値だと単純性脂肪肝ではなく、脂肪肝炎なのかもしれない。CRPが受診時からごく軽度に上がっている(0.5~0.7)のが気になった。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)疑いとして肝臓専門医に紹介するのが好ましい。

 とりあえず、脂肪性肝疾患だけでいいのかという問題がある。まだ検査していなかったので、肝炎マーカー(陰性だった)・ANA・AMAを紹介の前提して検査してもらう(否定のための検査だが、自己免疫性肝炎併発がないとはいえない)。

 また専門医に紹介といっても、行く気があるかどうかという問題もあり、今日はまず紹介の可能性もあることを伝えてもらう。外注検査の結果をみて、次回に紹介を考慮することにした。

 

 以前、病院職員で脂肪肝炎疑いの20歳代男性を、地域の基幹病院消化器内科の肝臓専門医に紹介した。本人が希望しないかったころもあり、結局肝生検はしないで経過観察になっていた。

 肝障害の程度は今回の方が重度になるので、肝生検の判断はおまかせするとして、まずは紹介したい。

 

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「大酒家突然死症候群」

2020年12月15日 | Weblog

 月曜日に地域の中核病院救急科から68歳男性が転院してきた。住所は東京になっているが、ずっと当地にある実家に住んでいる。母親が亡くなった後は、一人暮らしをしていた。11月の始めに胸背部痛を主訴に救急搬入されたとある。

 搬入時はショック状態で、アルコール性ケトアシドーシス・低血糖(50mg/dl)・腎障害と高カリウム血症・高尿酸値血症と診断された。「大酒家突然死症候群」の一歩手前の状況と、紹介状に記載されていた。

 治療により改善したが、今度はアルコール離脱せん妄となり、ジアゼパムやミダゾラムの投与を要した。さらに誤嚥性肺炎からCO2ナルコーシスを来して、気管挿管・人工呼吸を要した(4日後に抜管)。回復後に頭部CTを行うと左小脳梗塞も発症していた。

 肺炎として治療しても炎症反応が改善しないと思っていたところ、回盲部膿瘍と判明した。抗菌薬変更で保存的に治療して、何とか治まったそうだ。

 転院時は、経鼻胃管で経管栄養が行われていて、尿カテーテルが留意されていた。転院して来ると言っている内容はめちゃくちゃだが、会話はできる。普通に経口摂取できそうで、ST評価でも嚥下に問題なしとされた。今日から経口摂取を開始して(NGチューブは抜去)、尿カテーテルも抜去した(多分管理上の挿入)。

 転院依頼があってから、病院は病棟再編をしていて、いつもより引き取るのが遅くなった。その間に依頼があった時より病状が改善していたのだろう。

 転院後は体幹抑制と両手ミトン装着だったが、両手のミトンは外した。体幹抑制はしないと危ない。饒舌で天皇陛下の話が出てきたりして、内容は理解はしがたい。

 先方の病院には精神科医がいて、介入していた。ロゼレム・デジレル100mg・デパケン・ジプレキサ5mg・ロナセンテープ40mgと盛りだくさんに処方されていた。

 ここまで来ると、意識障害ではなく認知力障害になる。運動失調はあるが、不安定ながら歩行はできるはずで、かえって危ない。自宅退院は難しく(最終的にそうなるかもしれないが)、施設入所もどうか。精神科病院入院も考慮する必要があるかもしれないが、入院は同意しないだろう。

 

 「大酒家突然死症候群」は耳慣れない言葉だが、大酒家が突然死して、解剖をしても死因を特定できない場合に使用される。実態は、低体温・低血糖・代謝性アシドーシス(アルコール性ケトアシドーシス)・不整脈などが起きているらしい。

 患者さんは先方の病院を非難していた(いろいろ抑制されたからだろう)。死にかけたところを助けてくれた、と伝えたが、理解はしていないようだ。

 

 

 

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感染性腸炎~病原性大腸菌

2020年12月14日 | Weblog

 先週の水曜日に、39歳女性が右下腹部痛の内科新患を受診した。新患担当の内科の若い先生に相談された。

 日曜日の夕食後(ラーメン)に心窩部痛が出現して、当院の救急外来を受診した。嘔吐もあった。当直の外科医(大学病院からのバイト)が診察して、プリンぺラン・ブスコパン・整腸剤(ミヤBM)を処方していた。

 腹痛が持続して、部位は右下腹部になっていた。水様便が複数回出ていて、症状としては腸炎だった。右下腹部全体に明らかな反跳痛を認める。歩くと同部位にひびくという。筋性防御ありととる人もいるだろうという腹部所見だった。

 体温は、36.9℃で微熱程度だった。日曜日は白血球13000・CRP0.1と超急性期の炎症像だったが、水曜日は白血球10700・CRP1.2と、発症3日後経過している割にCRPが上がっていなかった。

 腹部造影CTを行っていた。虫垂がわからないということだったが、盲腸から左側に向かって細い虫垂を指摘できた。ごく小さな糞石もあるが、虫垂炎とはいえない。

 回腸から上行結腸にかけて腸管壁が浮腫状に肥厚していた。骨盤腔に中等量の腹水があった。心窩部痛から右下腹部痛になる経過や腹水貯留からは、急性虫垂炎が穿孔して腹膜炎を来したものとなるが、虫垂を指摘できたことでうまく否定できた。

 CRPが上がらなさすぎるのがわからないが、感染症腸炎として便培養を提出してもらった。通常は抗菌薬なしで経過をみるが、とにかく腹部所見と腹水が目立ちすぎるので、抗菌薬(セフメタゾール)を入れることにした。

 入院後は順調に経過して、2日後の金曜日には症状が軽減していた。右下腹部の反跳痛は軽度だった。そして今日は症状消失していた。便培養で病原性大腸菌O8(ベロ毒素陰性)が検出されていた。

 病棟再編で今日で閉鎖する病棟に入院していたが、めでたく退院となった。

 

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入院優先度判断スコア

2020年12月13日 | Weblog

 木曜日に県内の新型コロナウイルス感染症対策主要病院長会議がwebであった。院長先生は不在で(逃げた?)、代わりの先生も都合が悪く(逃げた?)、参加するようにいわれた。

 もっとも一番患者数が多い県庁所在地の患者をどうするかという話で、当院のような郡部のことはあまり対象にはなっていない。特に発言を求められることもないので、1時間ちょっと事務で用意したコンピュータの前にすわっていただけだった。

 基本的には、軽症者は入院ではなくホテル療養になる。またこれまでは、ホテル療養になる前に重症度判定のために病院の外来を受診することになっていたが、これがさばけないために自宅待機を要した。

 今後は外来受診なしで、スコアを使ってホテル療養か入院かを判定することになる。そしてホテル入所者が急変した際の受け入れ病院を、当番制で決めるそうだ。(当院は対象にならない)

 入院を決めるスコアは神奈川県で作成したものを使用する。神奈川県で内容を変更すれば、それに合わせて変更になるそうだ。県独自に作成するのが面倒なのか、すでに神奈川県で使用して有効なので採用したのか、まあ両者なのだろう。

 

 これまでは、高齢者は原則として入院で、高齢者以外は症状があれば入院だった。高齢者でも無症状の方たちもいた(接触者検査でPCR陽性)。また軽症者では発熱は1~2日で治まるので、その後は咳や嗅覚・味覚障害が続くが、入院するほどの必要はなかった。

 入院患者さんは全例入院時に胸部CTを撮影してきた。ごく軽度~軽度の肺炎を思いがけず認めることがあった。通常の風邪の原因となるもともとの新型ではないコロナウイルス感染症(1~4番目までの)でも同じなのか、新型コロナだけなのか。

 

入院優先度判断スコア

共通化した基準で入院の優先度を判定する目安としてスコア活用

下記にない項目(CT等)は0点とする

判断項目 スコア
75歳以上 3
65から74歳 2
ハイリスク因子1項目あたり 1から2
透析 6
37週以降妊婦 6
CT/単純X線にて肺炎像(片側かつ2分の1以下) 3
CT/単純X線にて肺炎像(片側かつ2分の1以上) 6
CT/単純X線にて肺炎像(両側) 6
酸素投与必要 5
重症感 1
無症状 -1

ハイリスク因子1項目あたり

基礎疾患 スコア
糖尿病 2
慢性呼吸器疾患(気管支喘息含む) 2
重度の心血管疾患冠動脈疾患、心筋症など心不全伴う 2
コントロール不良高血圧 1
高度慢性腎臓病(GFRが30未満が目安) 1
肥満(≧BMI30) 1
免疫抑制剤使用(ステロイド含む抑制剤) 2
悪性腫瘍に罹患し治療中 2
血液移植・骨髄移植、原発性免疫不全、HIV 2
臓器移植後 1

患者急増期において合計5点以上が入院の目安

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巨細胞性動脈炎

2020年12月12日 | Weblog

 「外来診療のUncommon disease vol.3」生坂政臣編著(日本医事新報社)を読んだ。このシリーズはvol.1、vol.2続けて購入している。今回のvol.3には、巨細胞性動脈炎(Giant cell arteritis:GCA)の症例が2例含まれていた。

 症例32には、臨床分類として、

 1)Cranial GCA 頭痛、顎跛行など古典的臨床像(頸動脈とその分枝)

 2)Large vessel GCA 高安動脈炎の類似(大動脈とその分枝)

 3)Silent GCA 虚血症状を欠き非特異的な全身炎症所見のみ 

 の記載がある。

 また症例69は、「巨細胞性動脈炎は稀に下肢の大血管炎にも炎症を生じる」と記載されている。間欠性跛行を呈して、PET-CTで胸部下行大動脈・大腿動脈・膝下動脈・後脛骨動脈にFDGの集積を認めた症例だった。

 

 リウマチ性多発筋痛症の症状を呈したが、プレドニン少量では反応せず、側頭動脈の所見がないかった症例があった。リウマチ膠原病科のある病院へ紹介して、造影CTで胸部大動脈とその分枝に炎症像を認めたと報告がきた。Large vessel GCAだった。

 またリウマチ性多発筋痛症として治療を開始したが、病状が急激に悪化した症例があった。認知症で寝たきりに近い高齢者で、専門医への紹介が難しかった。苦し紛れにプレドニン30mg/日を投与したところ、劇的に症状が改善した。

 これはLarge vessel GCAかSilent GCAだったのだろうか。プレドニン漸減は15mg/日までが限界で、それ以上減量すると炎症反応と症状が悪化していた。

 巨細胞性動脈炎とリウマチ性多発筋痛症だけに特化したテキストがほしい。

外来診療のUncommon Disease vol.3【電子版付】

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