● 谷山博史 「紛争現場からの警鐘」を読んで
『世界』1月号
須山敦行
◎ 《安倍首相、読んで!》
この文章を読んで、第一に強く思ったことは、「安倍首相も是非とも、『世界』で学んで欲しい。」ということだ。来月からこの読者会に出て来て欲しい。こういう声を、首相に届ける人はいるのだろうか。首相は、自分の言うことを聞く人で回りを固めてしまうタイプだから、無理かな?本当の友達はいないのだろうな。
実際の紛争国での活動の経験から、憲法九条を持つ日本が国際社会で果たす役割、その取るべき道を、日本の果たすべき「リアルな平和主義」を教えられた気がする。安倍君、「積極的平和主義」などという、言葉遊びは困るのですよ。
このようなNGOの努力を積んできた人々にとって、安倍首相の集団的自衛権は、これまでの努力の積み重ねを、全てぶち壊す、とんでもない仕打ちだ!ということだ。まことに困った、首相、危険な首相だ。
◎ 《ダシに使われた》
筆者は、14年5月15日、武装勢力に襲われようとしているNGO職員を自衛隊が救出するイラストで、集団的自衛権の説明をしたのを見て、驚愕し、NGOがダシに使われていると思い、これには、慎重に丁寧に反論しなければならない、と思ったという。
あの、テレビで放映された、首相得意満面の紙芝居の場面だ。
◎ 《NGOの安全対策》
NGOは、独自の安全対策に基づいて行動している、という。
その内容は、経験に裏打ちされて、リアルであり、学ぶところの多いものである。
それは、軍隊と活動をともにすることは、中立性を損なうために危険で、自衛隊の活動が武装勢力を活動地に引き入れることになるようなこともある、ということから、
■ 使う車、服装、行動において目立たないようにし、現地の住民に信頼され、受け入れられるようにすること。
■ 治安や危険に関する情報収集を綿密に行い、危険を避ける。
なかでも地元社会から得られる情報が極めて重要である。
※ 米軍の誤爆などの事件が絶えないのは、正しい情報を得られていないことに大きな原因がある。
■ 不測の事態への対処は、地元で信頼の厚い人間や赤十字国際委員会など中立性の高い機関の仲介で交渉する。
■ 軍との混同を避ける。軍が民生にまで活動領域を広げることで、軍事と民生の間にグレーゾーンが生じることになり、住民や武装勢力から見て、軍以外の民生活動も軍事活動であるとの混同を引き起こす結果になっている。
◎ 《日本独自の平和貢献を 「積極的平和主義」でなく、非軍事に徹して》
筆者は今後を見通して危惧する。結局、安倍政権はいかなる事態においても、アメリカの要求に応えて軍事支援を行えるようにしたいのではないか。そして、アメリカは、日本にこれまで以上の要求をしてくるであろう。
紛争・戦争の原因には貧困・抑圧・差別などの構造的な暴力があり、これを取り除くことが「積極的平和」のための国際協力だ。
それを日本が非軍事に徹して行ってきたことが、「平和国家としての日本のイメージを国際社会に定着させ、それが私たちNGOもとっても、海外の人々との友好的な関係や安全な活動環境をもたらしてきた」のだ。
アフガニスタンやイラクで平和が達成できなかったのは、日本が「普通の国」として紛争地で武力をもって貢献しなかったからではない。逆である。
主要な先進国のほぼすべてがアフガニスタンに軍を派遣し、紛争の一方の当事者になってしまったために、紛争当事者間で対話に向けた外交的なイニシアティブを発揮できる国がなかった。
そんな中でその役割を担うことができたのは「武力によって紛争を解決しない」という独自の立場にある日本だけであった。
アフガニスタンの長老は言う。
「日本は軍隊を派遣していないから日本の援助は真にアフガニスタンの復興を目的にしたものだと信じられる。」と。
日本に対するイメージは
日本は他国に軍隊を派遣せず、欧米的な価値観を押し付けることもしない。
ということ、だ。
私は、この道を支持し、この道を応援して行きたい。