● 内海愛子×高橋哲哉 「跋扈する歴史修正主義をかき分けて」を読んで
『世界』9月号 須山敦行
※ 「戦後七〇年、歴史との向き合い方を考える」という対談である。
高橋氏が問題にしている点は、日本人に戦争への反省はあっても、植民地支配に対して真摯に向き合う議論が少ない、ということである。日本人の中に染み付いている「植民地主義」は本当に根深いということだ。確かに、「戦争」、「戦争死」、「戦争の被害」などへの言及に比べ、「戦争」と地続きである「植民地支配」の内容、意味、実態に対して向き合う事が少ないように思う。それが、アジアとの近隣国との問題の解決の為に重要だということを改めて考える視座をもらった気がする。
以下、取り上げられていた、論点を並べてみる。
◎ 《 「脱亜」 》
戦後はまさに「脱亜」でした。 (内海)
戦後の歴史の中で、アメリカに負けたことは受けいれたが、アジアへの加害は忘れ去ってきた。
※ 近代日本の建設を「脱亜」として進めてきた日本だが、戦後はアジアへ加害の無視という形で、その「脱亜」が一層進行したというわけだ。
「脱亜」は、日本を捉える重要な概念だ。
◎ 《 「吉田松陰の復活」 》
吉田松陰の『幽囚録』
「欧米列強に日本が伍していくためには、いま早急に軍備を整えなければならない。そして蝦夷地を開拓し、オホーツク、カムチャッカを奪い、琉球を幕府に従わせ、朝鮮を攻めて昔のように日本に服従させ、さらに北は満州から南は台湾、ルソンに至るまで一手におさめるべきであり、オーストラリアも植民地にすべきだ」
安倍首相が最も尊敬すべき人物として挙げている
◎ 《 「東京裁判」で裁かれなかった 植民地支配 》
日本人が植民地意識を戦後に引き継いでいった一因はこうした戦争裁判のあり方もかかわっている。
※ 対連合国で裁かれたが、対アジアは無視された。
こうした戦後処理の中で、アジアとりわけ東アジアでの戦後処理に多くの問題を残しています。
◎ 《 米国の「属国」日本 》
戦後処理に関しても、米国の冷戦に対する都合から来る意図や圧力が大きく働いた
「サ条約に基づく日本の独立は、せいぜい米国の「信託統治」領であった」
ガバン・マコーマック
日本の支配層による 「自発的隷属」
◎ 《 沖縄を見る目の「植民地主義」 》
自衛隊と日米安保のセットで安全保障をということへの賛同が日本国民の八割を超えている
戦後日本人の意識は昭和天皇のそれと近かった
沖縄の基地の本土移設を引き受けることが、安保を支持している本土が担うべき責任だ
本来は本土にあるべき基地が沖縄にあることに気づかなければ、当事者意識を持つのは難しいでしょう
「沖縄から見れば違う日本が見える。」 (内海)
植民地主義とは、実は沖縄を観光地として見ていること、それ自体の中にあるのかもしれない。
(高橋)