『世界』を読む会

寅さんの博も読んでいる『世界』を読んで、話し合おう。

「死の産業」と安保法制

2015-08-18 14:16:03 | 日記

● 谷口長世 「『死の産業と商人』から眺めた安保関連法案」を読んで
  『世界』9月号                         須山敦行

※ 《筆者は
  筆者は、ブリュッセル在住のベルギー国際記者連盟副会長という国際ジャーナリストということだが、世界を動かす、あちら側の重要人物から直接話を聞いている、実際の要人との交流のある人物のようで、内容に臨場感があって、現実に深くコミットしていて、面白い。

※ 《具体的な人物
  兼原信克 内閣官房副長官補兼国家安全保障会議次長という人物が、安倍首相の下で安保法制のすべてを采配してきた、というように、具体的に顔のある内容を書いている。
 「憲法九条再解釈」路線は、10年以上前からの規定の路線で、第三次アーミテージ・ナイ報告(2012年)にも示されている。
  兼原君はアーミテージのグループと親交で、安保法制は、兼原君の属する外務省関係者をはじめとする日本のグループとアメリカのネオコンと呼ばれる軍産複合体に近い人々との合作だと言う。

◎ 《影のサミット
   「G7サミット」の後には、場所を変えて「影のサミット」が開かれ、そこで事の本質に属する内容が検討されている。
   現代の戦争を巡る状況は、軍事産業と情報技術産業の一体化が進み、「紛争」対応と「復興開発」が、介入の当初から「軍民起用力」という形で同時進行している。「死の産業」が「生の産業」と一体化し始めているのだ。軍事活動の主体である各国軍隊と人道支援の担い手の諸組織、そして復興開発を受注する企業の三位一体の協力である。「死の産業」は、今や「総合安保・復興開発の市場」へと間口を広げているのだ。
   つまり、戦争し、終わらせ、開発すること全体が、企業の利益の材料になっているのだ。そういう勢力が、戦争をリードしているというわけだ。

◎ 《紛争・軍事で儲ける国へ
  日本の今回の安保法制は、「紛争や他の軍事活動に積極的に関与し、儲ける国・日本」への布石というのが、その本質だ。兵器産業・情報技術・土木建設などのインフラ業界 を巻き込んだ「死の産業」=「世界の平和・安定化の産業」(安倍流に呼べば)のためだ。紛争の発生、悪化から停戦、そして復興・国造り・開発へと流れ作業式に、「シームレスな」市場が出現するのだ。

◎ 《南スーダンに注目》
  南スーダンには、陸上自衛隊310名が存在し、内戦状態が19ヶ月続いている。ここで邦人の人質事件が発生すれば、安保関連法案を絵に描いたような状況が現出することになる。危険で不安定な南スーダンから、安倍政権は自衛隊を撤退させるべきだったが、それを怠った。南スーダンの危機的な報道は、「だからこそ安保関連法案が必要」の世論説得材料になりうる。
  参議院で野党が先手を打って、数年前の陸自派遣後に起きた南スーダン情勢悪化に適切に対応しなかった政府の責任を追及すべきである。
  どちらが先になるかが重要な分岐点だ。それまでに南スーダンで何が起きるか、予断を許さない状況である。

※ 具体的なこれからの参議院での質疑の内容にまで踏みこんだリアルな話であるのが面白いが、筆者が「野党」と呼んでいるのは、なんとなく「民主党」のことのように感じる?

◎ 《南スーダンで中国を支援か》
  中国は、石油企業の利益を守るべく、歩兵大隊を南スーダンへ送っている。
  日本の自衛隊は、安保関連法が成立すれば、国連現地司令官次第で中国の部隊に対する後方支援をする可能性も出て来る。安倍が安保関連法を訴えた第一の理由は中国の軍事的増強への対抗だったのに、全く矛盾した状況となる。

◎ 《 法案成立後の闘い 「制約」
  もし、法案が成立してしまったら、「制約」が重要なポイントになる。
  自衛隊の派遣には国会の承認が要る。承認では当然、「制約」を巡る質疑が必至だ。
  野党が「制約」について具体的な要求をするためには、明確に統一された党の安全保障政策が前提となるが、民主党内では安全保障政策が大幅に食い違いがある。民主党が具体的な政策に基づき、政府の矛盾や嘘に鋭く切り込む実力を示せば、国民の支持は広がるだろう。
  安倍政権の暴走を止めるのは、安保法制反対の世論にすがる野党の力ではなく、国民の暮らしと国家の安寧に現実的な政策を実行できる責任ある政党である。

※ ここで、「野党」とはどうやら「民主党」のことだと、言っているようだということが分かる。そして、「安保法制反対の世論にすがる野党の力ではなく、国民の暮らしと国家の安寧に現実的な政策を実行できる責任ある政党である。」という件(くだり)になると、「現実主義」的な軍事や抑止力というところから、果たしてどんなところへ進む議論になるのだろうか、と、危ぶまれる気もする。

 

コメント
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