富岡の『世界』を読む会・8月例会の報告
富岡『世界』を読む会・8月例会が参加者5人で、8月23日(水)14.00~16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンターで開かれた。
テーマは『世界』8月号から、①松本一弥・稿『メディアの「罪と罰」第4回「空前絶後」の朝日新聞編集局長』、②太田昌克・稿『G7首脳は広島で何を失ったか』、➂石川健治・稿『始源について』の三論考だった。
Ⅰ.松本一弥・稿『メディアの「罪と罰」・「空前絶後」の朝日新聞編集局長』
この論考は、二年前68歳で急死した元朝日新聞編集局長の外岡秀俊にフォーカスしたメディア論である。「歴史問題にきちんと向き合う新聞にする」として実現した連載記事「新聞と戦争」の紹介のなかで、「朝日新聞の地下には軍需工場があった」の章は、驚きだった。さらに、事変後44年経ってもなおかつ、石原莞爾の謀略だった満州事変を賞賛する元奉天支局長の存在に、朝日新聞社の戦争報道加担の戦後総括の不十分さと危うさを感じた。偶然にも、「読む会」前日の朝日記事「朝日は戦争反対やらんか-社長へ石原莞爾からの伝言」(8/22「戦艦大和の母港・呉を訪ねて17」)は、石原莞爾と朝日新聞社の「距離がゼロ」だったことを痛烈に現わしたものだ。 外岡の「空前絶後」の存在感を知ることが出来た半面、なぜ1年半程度は辞めたのか、弱気すぎるのではないか、もっと頑張って欲しかった、などの指摘があった。
Ⅱ.太田昌克・稿『G7首脳は広島で何を失ったのか—深刻化する核カオス』
筆者は指摘する。G7広島サミットは、無条件で核使用を否定した「G20バリ首脳宣言」から後退し、「核なき世界」を目指すのに絶対不可欠な「核兵器の役割低減」の言及を欠落させてしまった。これは日本政府の「核の傘」に対する忖度が働いたものだ、と。G7が、核保有国と核の傘下国の、つまり核の抑止力に依存する国々のグループであることを、世界に発信するものだった。G7首脳が被爆地ヒロシマに参集することによって、首脳らが「被爆の実相」を目の当たりにして、90を超える核禁止条約署名国との分断を乗り越える期待を裏切った。
Ⅲ.石川健治・稿『始源について』
「安倍政治の決算」と題した特集の巻頭論文に置かれた本稿は、安倍政治は終始一貫、立憲政治の共通基盤を破壊し続けた、と総括している。その最初の一歩(始源)は、政権奪取後即の2013年春、安倍らは「憲法改正権」(第96条)の改正を打ち出した。石川は、「『憲法改正権』を創設するために置かれた96条は、日本国憲法全103条の中でも最上位の規範であり、日本の憲法秩序の根幹をなしてきた」と指摘し、安倍らの企みを、「既存の憲法秩序への叛乱を呼びかけたもの」だと断じている。 憲法学者の論理の展開に、思わず「う~ん」と感じ入った。一見無味乾燥な憲法条文だが、ち密な論理を重ねるうちに、現実的かつ立体的な憲法像が立ち現われ、条文に託された歴史と思想が明らかになる。石川論考を繰り返し読む中で、こんなことを考えた。
Ⅳ.富岡『世界』を読む会・9月例会について
1.開催日・場所:9月20日(水)14.00~16.00時、吉井町西部コミュニティセンターにて
2.テーマ (1)インタビュー・文在寅『前大統領、書店をひらく』
(2)元村由希子・稿『研究者を使い捨てる国』
以上
