富岡『世界』を読む会・9月例会の報告
(郡山さんから)
1. 月日:9月15日(水)9.30-12.30
2. 場所:高崎市吉井町西部コミュニティ・センター
3. 参加 6人
4. 内容
1. 特集Ⅰ企業を変える―気候・人権・SDGs 内田聖子 稿『パンデミックが映す命の格差―公正な医療アクセス阻むグローバル製薬企業』
2. 特集Ⅱ最前線列島―日米安保70年 古関彰一 稿『戦後日本の主権と領土―日米安保70年の現在』
Ⅰ.「企業を変える」について
①公衆衛生原則「すべての人が安全にならなければ、誰一人として安全でない」を踏まえ、先進国で開発されたコロナ・ワクチンの知的財産が全世界で共有され、グローバル公共財とすることに、全員賛同しました。
②「私はワクチンを打ちました。しかし、世の中にはワクチンを打ちたくても打てない人がいる」という不条理に言葉をなくしたい、という発言がありました。
③米国バイデン政権によるコロナ・ワクチンの知的財産権免除賛成方針が、米国社会での市民運動やメディアでの論争を経て、民主党左派・良識派が積極的にコミットし、NGO、労組、政府関係者、航空業界など米国社会を大きく動かす中で達成されたことについて、米国政治のポジティブな側面を垣間見た、との感想がありました。しかし、WTOの結論は長期化の見通し。
④では、ワクチン格差解消に向け、国際社会は何をしているのか。『世界』10月号の稲場雅紀 稿『コロナ・ポストを切り拓くアフリカの肖像』が、アフリカの指導者によるワクチン接種促進のための努力と工夫を紹介しています。接種率1%未満というサハラ以南アフリカの人びとへのワクチン提供こそ、「すべての人が安全に」原則実現の道筋であることは自明だと思います。
⑤世界人口78億人に対してワクチン製造メーカー7社という希少性(寡占状態)こそが問われるべきだ、との意見が出されました。また、日本企業によるワクチン開発の遅れと消極性に対しては、溜息をつくばかりでした。
Ⅱ.「日米安保70年」について
①今年9月上旬のメディアは、歴史的事件については「9.11米国同時多発テロ事件20周年」にもっぱらフォーカスし、「9.8日米安保70年」を完全に無視した、との指摘がありました。『世界』では9月号と10月号で連続して「安保70年」を取り上げ、しかも大変刺激的な論文が寄せられたことに、「さすが『世界』だ」と敬意を表します。
②いままで「主権」や「独立」については、なんとなく分かったようで曖昧な認識だったけれど、古関論文でいくらか整理することができた、との感想が出されました。
③「日米安保」の70年間は一貫して、密約と隠蔽が貫徹していたことを、古関論文と豊下論文(10月号)であらためて確認した、との発言がありました。
④米国は独立戦争からアフガン戦争まで絶えることなく戦争をしてきた国家であり、米国の主権意識はいつも、軍事力を伴うものであった、との指摘がありました。
⑤「日本政府には独立意識が極めて薄い」との指摘に、戦後の対米従属の秘密を垣間見た思いでした。
⑥複数の参加者が、文谷数重 稿『尖閣はどうなっているのか』を興味深く読みました。「尖閣は安定している」ということが、現実的な認識なのかどうかすんなり納得できない、との意見がありましたが、一方、元自衛官の筆者が冷静かつ現実的に尖閣について現状分析していることについて、防衛省や自衛隊の現場の尖閣認識は、ほぼこうしたスタンスなのではないか、との感想が出されました。筆者はされば「もっとも警戒すべきは、国民感情の過熱」だと警告していますが、これこそ傾聴すべきだと思います。
◎ 富岡の雑誌『世界』を読む会、10月例会 の予定
●日 時 10月20日(水)
●場 所 高崎市吉井町西部コミュニティセンター
吉井町長根174-6
●時 間 午前9時半
●持ち物 雑誌『世界』10月号
○共通テーマ
(1)特集1.脱成長―コロナ時代の変革構想
①山本達也『ニュー・ローカルの設計思想と変化の胎動』
②上村雄彦『グローバル・タックス、GBI、世界政府』
(2)東大作『アフガン政権崩壊―失敗の教訓と平和作りへの課題』
です。
