渡辺洋二著、文春文庫刊
亡き父から聞いた僅かな戦時体験の中で、父は爆撃機の「呑龍」を操縦し銃撃で傷を負ったそうです。
本書の主役である「屠龍」は、名前が似ていて気になり手に取りました。
用途は異なりますが、双発であることなど共通点もあります。
本機は、軍の指示により川崎航空機工業が開発しましたが、当初の想定である強力な戦闘機としての能力を達成することが出来ず、運用と改修によって、重爆撃機への攻撃に適性を見い出して運用されたそうです。
工業水準が未熟で十分な性能の機体を開発する能力が低く、必要になる機体を予見する能力と見識が不足していたことから、次第に性能と物量で圧倒された闘いへ変わって行きます。
それでも対応策を考え出し、本機に戦車砲を搭載したり、機関砲を斜め上向きに設置したりして、B-29に立ち向かったとのこと。
開発経緯だけでなく、初期型から派生型まで、それぞれの活動の記録を乗員や整備関係者の名前を逐一挙げ詳細に辿っています。
これだけの情報を正確に取材し、本書に仕上げるには膨大な労力を要したと思います。
敗戦に向け、空対空の特攻を敢行した先人たちの願いがどのようであったかに思いを馳せ読了しました。
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○渡辺洋二 ○屠龍 ○呑龍
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評価は4です。
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