田中康弘著、山と溪谷社刊
絶滅が危惧される職業である「鍛冶屋」を取材した著作です。
かつて農業と林業が盛んな時代には、現在の様な大量生産の鉄製品が存在せず、各地域には需要に応じる鍛冶屋があった。
しかし農業と林業の衰退で需要が減少し、安価な製品の普及した為、鍛冶屋という生業が立ち行かなくなった。
だから全国的に鍛冶屋の少なくなったのだそうです。
一方で地域での需要がまだ一定程度残っているので、少数の鍛冶屋が存在し得ているようです。
山仕事や田畑での農作業などで、普及品にはない使い易さと耐久性、そして修理が出来ると言うことが大切なので、需要が残っている地域があるのだそうです。
また漆の採取などの特殊な用途には、それに適した道具が必須ですが、鍛冶屋しか作れないとのこと。
更に、全国的な鍛冶屋の減少によって、居住地に鍛冶屋が無いことが増えており、ネットを通じた注文と納品が成立しているそうです。
ナイフなど、世界的に求められる製品では、海外からの注文もあるそうです。
その一方で、国内各地からわざわざ足を運び、修理や注文をする人もあるとのことで、割高ながら、使いやすく、修理を行えば末永く使える製品を作る鍛冶屋の存在意義は大きいようです。
しかし、一通りの技能を身につけるにはそれなりの年月を要するとのことで、後継者問題は頭の痛い課題とのこと。
以上の様な背景が、個々の取材で断片的に語られて、読了すると現在の鍛冶屋の全体像が把握できる構成です。
また、著者は、それぞれの鍛冶屋さんの人となりに深い関心を寄せており、人の有り様の美質を、多面的に浮き彫りにしています。
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○田中康弘
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