読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩

2024年03月05日 10時21分27秒 | ■読む

金敬哲著、講談社現代新書刊
同著者の「韓国 超ネット社会の闇(新潮新書)」を読んで感銘を受けたので、本書を手に取りました。
本書は
第1章 過酷な受験競争と大峙洞キッズ
第2章 厳しさを増す若者就職事情
第3章 職場でも家庭でも崖っぷちの中年世代
第4章 いくつになっても引退できない老人たち
第5章 分断を深める韓国社会
の5章からなっています。

最初から最後まで、激烈な生存競争の有様に圧倒され、つくづく韓国に生まれなくて良かったと思いました。
それ程に、競争が熾烈で容赦の無い社会になってしまった様で、著者は、その実相を様々な統計の数値で示し、取材した人々の肉声を紹介しています。

先日読んだ「シン・中国人 変化する社会と悩める若者たち(斎藤淳子著、ちくま新書)」で、中国の激烈な競争社会に唖然としたばかりですが、韓国はその上を行っているようです。
日本のかつての受験戦争など比べものにならない激しいです。

大学卒業生の就職率(2017年)が66.2%だそうで、10人居たら、3人強が就職できないとのこと。
子供を持つ夫婦(特に夫)が、子供の受験競争、就職のために必要なお金を捻出しなければならない苦しみ。
53歳前後に首になり、第二、第三の職業を何とか見付けて就職できない子供を助け、自身の親の世話をしつつ、平均73歳くらいまで働き、80歳位まで生きる、辛い高齢者。
少数の富裕層と多くの一般世帯及び貧困世帯間の様々な格差とその固定化、文在寅大統領の数々の失政と積弊精算に政策による、韓国社会内の保守層(高齢者が多いそうです)と左派勢力の分断(執筆時は文在寅氏の任期中)。
こうした恐ろしい現象が紙面から湧き上がってくるようです。

韓国は1997年の国家経済破綻によりIMFの支援を受けた際、徹底的な経済構造の改革を強いられたことから、それまでの競争社会への勢いが更に激烈になって今日に至っているとのことです。
本書の内容は、殆どが首都のソウルでの内容ですが、下記リンク3つ目によれば、
「韓国における首都圏とは、ソウル特別市、仁川広域市全域と京畿道31市郡を含む地域である。京畿地方とも呼ぶ。中略・・・人口は2596万人(2020年現在)であり、韓国総人口の過半数を占めている」
とのことです。また、その理由は
「数千万人以上の人口を抱えながら、一つの都市圏にこれほど人口が集中している国は韓国以外にない。集中率が高い理由としては、韓国の大企業の本社や名門大学の大半がソウル市にあり、若い世代が「ソウル志向」にならざるを得ない社会構造になっていることが挙げられる」とのこと。

近くて遠い国、韓国に、テレビドラマを見て関心を寄せましたが、知れば知るほど、不可思議な国ですが、少なくとも、本書によって、今日の韓国の人々、特に首都圏の人々の境涯の一端を知ることが出来ました。
第1章は、叙述が少し退屈でしたが、読み進めればするほど淡々とした筆致で、恐ろしい状況が眼前に迫って来ます。

その一方で、バブル崩壊以降、世界の繁栄から徐々に脱落しつつあり、それなりに現状に満足している日本人の将来が、少し心配になりました。
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金敬哲(1)  ○金敬哲(2)  ○首都圏 (韓国)
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評価は5です。

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カメラまかせ 成り行きまかせ  〇カメラまかせ 成り行きまかせその2

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