読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

職権乱用

2011年10月24日 18時57分02秒 | ■読む
松任谷正隆著、二玄社刊
今から四十年位前のこと。同級生のT君が嘆息してこう言いました。「人間の価値は、経験や苦労に裏打ちされた人格にあると思っていたが、K君を知って考えが変わった。彼の家は裕福で、両親ともインテリで苦労も知らないで育ってきた。だから、脳天気の坊っちゃんかと思っていたが、性格が良くて真面目で明るくて、全く欠点がない。植物で言えば竹だ。俺が好んでいた盆栽の松は、色々な経験の挙げ句、立派な姿になったと思っていたが、彼の様にすなおに立派な人間になれるとは!。俺は彼を尊敬してるよ。」と言っていました。そう語った友人は正しくひねこびた盆栽の「松」そのものの様な人でした。(今はどーしているかなぁ。結婚するまでは凄いマザコンだったけど)
さて、松任谷さんは、その「K君」を連想させます。おっとりした顔立ちで、テレビでの発言を聞いていても、不快さを全く感じない。品格を感じます。
今から38年前、別な同級生の下宿に行くと、知らない歌手のLPレコードを聞かせてくれました。荒井由実という歌手でしたが、何とも不思議で新鮮な魅力がありました。彼が高校生の時に、荒井由実のコンサートを(確か体育館?)で見た時に、舞台上で花火を付けるという派手な演出でビックリして、気に入ってLPレコードを買ったそうです。私も後日そのLPを購入しましたが、「ひこうき雲」などの名曲が懐かしい。
そのお二人が結婚したのは、私がLPレコードを買った少し後のことです。まぁ、ご両人とも経済的に裕福な環境で育ったようですが、それぞれの個性と才能を生かして、活躍されてきました。立派です。
さて、本書は、様々な活動をしておられる松任谷さんが、その一つの活動領域である自動車評論に関して著した著作です。地理挙げているのはほとんどが外車です。徳大寺さんの著作などを読むと、ありがたいプロフェッショナルの占いを聞いている様な気がしますが、松任谷さんの語り口は、てらい無く正直で好感が持てます。ご自分の感性を拠り所として語っており、専門分野の評価にありがちな意味不明の表現とは全く異なっています。本書でも著者は、そうした評論を酷く嫌っていることを率直に述べておられる。また、世間で自動車評論家として通っていながら、そうした肩書きを恥じているようです。本書で松任谷さんが語っていることは、何から何までまっとうで気持ちが良い。ご自分は謙遜しかりですが、立派なお人柄とお見受けしました。松任谷さんの素敵な人柄に触れられることが、(評論も良いのですが)本書の最大の収穫だったと思います。
因みに、本書のタイトルは、松任谷さんご自身が考えついたとのことで、カバーのイラストが秀逸です。このようなタイトルを考えついて選び取った松任谷さんの感性に感服しました。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/松任谷正隆
     http://blog.honeyee.com/mmatsutoya/
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評価は4です。

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