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今、いすみのどこにでもこのチガヤの群落が見事な穂をつけて風になびいています。
日本人が古来から見慣れた景色なのでしょう。
万葉集などで桜の花をたたえる歌を見ても、いつも気持ちのどこかに、これは万葉人が見たものかなって疑問符が点滅しています。現代のわれわれに一番見慣れた桜はソメイヨシノなのかもしれません、そうすると万葉人やその後の古今、新古今の時代にもてはやされたものとは違うものですよね。
前の日記で、コブハクチョウや、キョンの話をしました。本来日本になかったものが入ってきて、それが定着していく。周りの畦や野原を彩っているタンポポだって、今やセイヨウタンポポの勢いの前に在来種の日本タンポポは探し出すのが大変な状況になってきています。
でも、このような雑草、、、であれば、なんの疑問もなく万葉人と感興を共感できるのでしょうか。多分、そうなのでしょうね、、、、でも、ちょっと調べてみないとどう変わっているか分からない、一抹の疑問も残りますね、、、、
万葉集には身近な植物がたくさん詠みこまれています。チガヤもその代表的な例です。他には稲や稗、薄などもそうですね。
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浅茅原つばらつばらにもの思(も)へば
故(ふ)りにし郷し思ほゆるかも
大伴旅人 3-333
あるいは、山部赤人の
印南野(いなみぬ)の浅茅おしなべさ寝る夜の
け長くしあれば家し思(しの)ばぬ
6-940
のように、旅人の歌は、浅茅はらをみて、自分の故郷の風景を思い出している詩。赤人のものは、旅の途中で浅茅を分けて寝ようとすると、なかなか寝付かれなくて家のことなどが思い出されてしまうという詩。
万葉の歌は浅茅や浅茅の原を見てストレートに湧き上がってくる思いを詠っているものが多いのですね。
それに対して、古今集や新古今集ではもう一ひねり加わってきます。
古今集の14-725 詠み人しらず
おもふよりいかにせよとか秋風に
なびくあさぢの色ことになる
あの人をこんなに愛しているのに、(あの人は)それ以上何を求めているのでしょうか、なぜ秋風に吹かれる浅茅の葉っぱの色のように、どんどんと心が変わっていくのでしょう、、
そして、同じ古今集の15-790には小野の小町の姉の詩として
時過ぎてかれゆく小野の浅茅には
今は思ひぞたえず燃えける
この詩には詞書がついていまして
あひ知れりける人の ようよう離れかたになりけるあひだに 焼けたる茅の葉に文を挿してつかわせりける
と書かれています。
枯れ行くなんて書かれているので上の詩と同じ秋の詩かと思えば、この詞書によって、だんだんと疎遠になっていく恋人に野焼きで焼けた茅の葉をつけてだした恋文だと分かりますね。
時が経って枯れていく小野(自分の名前を織り込んである)の茅の葉は、今でも消えない思いを持っていますって、、、、
強烈な恋文ですよね、、、、
これを貰った人はどんな感じでこれを読んだのでしょうか、、、
いつも思うけど、仕事上のビジネスレターならともかく、個人の消息、それも恋人に当てた恋文なんかはこんな風な詩を送り、受け取る、そんな余裕が欲しいですね。われわれはかって、こんなに素晴らしい文化を持っていたのですから。
なんて、じゃ、あなたがやってみればって言われると、穴に入ってしまうしかないですけど、、、、
文明の発達と引き換えに失ったものも実に多いですね。普段私たちははその快適さ、便利さに慣れきって、そのことさえも気が付かないでいますけどね。
そして、その品々がほんとうに人々の間に身近に存在し続けてきたこと、、、
古今集や新古今集では、一握りの特権階級の間だけかもしれませんが、詩は手紙であり、消息だったわけです。
それから時代が下がって、プロが存在し始めたときから、詩は敗退して行ったのかも。
芸術作品全部にいえるといったら、そんなものに生涯をかけた私の一生は無駄だったのかななんて思いますけど。
多摩川はだんだん緑が濃くなってきましたが、所々『あれ??』。
昨日も早朝、国土交通省の関係者とはとても思えぬ年配の方が鎌で茂みを切り開いていました。
何のためなんでしょうねぇ...。
もちろん、ハマダイコンや、菜の花、クコ、ミントなど、採られているのが分かるものもありますけど、あの人たちは大きな袋をいくつも持ってきて刈った草を詰めて持ち帰っているのですよね。最初は競馬のトレーニングセンターの人かと思い、それにしてはあのコースの周りは草ぼうぼうだなということで、、、
山羊でも飼っている人がいるのかななんて思ったり、不思議です。