西欧・北欧先進国の社会保障の仕組みを見ると、その財源を多く消費税に依存しているように見える。社会保障が安定的に保障されるべきであることを考えれば、時々の景気や経済にできるだけ影響されない消費税(または物品税的なもの)や資産税などをその財源とするのは一つの知恵と思われる。もちろん、徴求する側に安定的ということは、取られる方にも厳しく、低所得層にも等しく負担させられる逆進性の強い大衆課税で、それだけ低所得層への配慮が必要だ。大幅導入国は食品など消費項目による税率軽減や低所得層への還付など工夫を凝らして導入している。
北欧諸国の社会保障を見ると、消費税20~25%と高いが、医療、教育など無料で、老後保障も確立されているので国民に不満はないようだ。自分の出した金(消費税)で最低生活を保障する体制を構築したので不満はないのだろう。アメリカやイギリスは自己責任の国だから、医療や年金など自分で考えろと国民に任せている。それだけ恐ろしいような格差社会(アップル社もありビル・ゲイツもいるが、アメリカには無保険者が5千万人(全人口の17%)いると推計されている!)となっており私は嫌だが、これはこれで国民も合意しているのなら仕方あるまい。
日本はどうか? 戦後の高度成長の中で国民皆保険や相応の年金制度を作り上げてきたが、財源の裏付けが遅れてきたので今や大変な事態を迎えた。というより、財源とすべきものを公共投資などかなりのムダ使いに使い、また円高操作でアメリカにヘッジされたりして来たので、アッという間に財政破たんを迎えた。
前回指摘したように、今回の5%増税のうち大半の4%はこの「綻び補填」に向けられ、同時に受給年齢の引き下げや後期高齢者の保険料負担増などの改悪が並行しているので、これでは国民は納得しない。昨年までは「社会保障充実のためには消費税増税やむなし」と賛成が過半数であったが、改悪実態と増税案が明るみに出るに従い賛成が減り、今日の毎日新聞世論調査では賛成37%、反対60%だ。
日本は高度成長の間に社会保障についてなすべきことを怠ってきたのだ。いたずらに経済成長を追い無駄な公共投資などに金をつぎ込み、国家百年の大計を見誤った。日本の国力と、国民に納得のいく応分の負担(消費税、物品税、資産税など種々あるが)を成長期に実現しておれば、医療、教育の無料化を中心にした高度な社会保障体制を築くことは十分にできたのではなかったか?
さて、今となってはどうするか?