カープファンにとって、今シーズンのすべり出しほど胃の痛む思いをしたことはない。
昨年オフの、マエケンの残留、黒田の復帰という相次ぐ朗報は、カープファンを熱狂させた。特に黒田が、メジャーリーグ20億円の報酬を捨てて、4億円で「古巣広島への恩返し」を決意したことは、単にカープファンだけでなく多くの日本国民に感動を与えた。この快挙は、人々に、「日本人が久しく忘れていた生き様」を思い出させたからだ。
渦中のカープファンは狂喜し、今年のカープ優勝を確信した。当然のことながら、快調なすべり出しを疑わなかった。4月を終えて鯉のぼりの泳ぐ時期には、当然Aクラスにいて、巨人、阪神と1位を競り合っているはずであった。
ところが、最下位、借金8、10勝18敗でゴールデンウィークを迎えた。しかも、その負け方が悔しい。ほとんどが1点差の敗北だ。しかも延長戦での敗北が重なり、ファンの胃の痛みは頂点に達している。加えて、優勝に向けての象徴的存在である黒田の戦列離脱だ。
こうなるとファンとしては、優勝どころか、「カープはもう勝てないのではないか」とさえ思うようになる。 どちらも、何の科学的根拠もないのであるが。
こうして迎えた巨人三連戦は、カープファンのこの思いを吹き飛ばした。第1試合で、何十年ぶりの珍事という敵失で1点差の勝利を呼び込んだ。これまで悔し涙に泣いてきた1点差敗北を勝利に変えた。しかも何としても勝たせたかった大瀬良の勝ち星だ。弾みがつくと怖いもので、翌日は13対1の大勝だ。マエケンならせいぜい3点取ればいいのに13点とはモッタイナイなど、こうなると余裕が出てくる。続く第3戦も当然のように余裕の勝利だ。
鯉(カープ)の季節は本当に来たのだろうか?
毎年ゴールデンウィークは、地元広島で巨人との3連戦を行うが、三連勝の記憶はあまりない。それどころか、5月(鯉の季節)までは好成績を残すが、その先力尽きるシーズンが多かった。今年はもしかすると逆を行くのではないか? ファンとしてはそう信じたい。これまた、何の科学的根拠もないのであるが。
すっかり緑を増した甲州街道のけやき