旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

日本酒の最前線~フルネット社「日本酒セミナー2016」に参加して(つづき)

2016-03-21 13:56:34 | 

 

3.桜井博志氏(『獺祭』 を醸す旭酒造(株)の蔵元)
 今を時めく獺祭、製造石数1万6千石、その11%を輸出している世界の酒ともなった。全量純米大吟醸、今や「美味しい酒」の代表格。桜井氏の主要な発言は以下の通り。
 「美味しい酒を造れば必ず売れる。いい原料(山田錦)を磨きに磨き(平均精米歩合43%)、いい技術をつぎ込む(必要な手作業の手は抜かない)。70%精米でもいい酒が出来るはずだ、という意見があるが、その考えはない」
 「品薄に伴う“幻の酒”にはしない。5万石を造れる設備投資をした(12階建てビル完成)。山田錦の購入量を現在の15万俵から30万以上に倍加する必要あり。そのため新潟、栃木、茨城県などに生産拡大の手を打った(山田錦の全生産量60万俵以上を目指す)。
 「これらにより、日本の米産業に貢献したい。日本の食用米は750万俵と言われているので、山田錦の貢献度が増す。企業は社会の発展とともに!、がモットー」
 5万石という大量生産で今の高品質を維持できるか、に期待する。

4.新澤巌夫氏(『伯楽星』を醸す(株)新澤醸造店蔵元)
 農大を出て蔵に帰り酒つくりを始めるが、全く売れない。何故売れないかは明白、「美味しくない!、東北で一番美味しくない酒であった」と言う。そこから、涙ぐましい努力を続ける。
「全国の名だたる酒を、毎年400種取り寄せて甘辛の傾向など調べる。酒販店に出して4か月以上経った酒はすべて回収。“しぼりたて”は10日以上のものは出さない。残った酒はリキュールにするか処分する。人にあげると流通する恐れがあるので蔵から出さない」
 こうしてようやく売れ始めた時、東北大震災で蔵が崩壊、移転を余儀なくされる。そのどん底から再建を目指して、日本最高峰の磨き「精米歩合7%の純米大吟醸『残響』」に挑む。
 「香りを出さないで、米の芯だけの酒の味を求めた」という。価格3万円、海外では2500ドル、約28万円で売れているという。因みに当社の製造石数は2千石、海外輸出比率10%。

5.
久慈浩介氏((株)南部美人蔵元)
 ご存じ、日本酒の良さを「世界に発信する伝道師」として知られる久慈浩介氏。当社の製造石数3千石、うち海外輸出比率18%、世界中を飛び回り日本酒を広めている。国内にあっても、あの東北大震災で自粛ムードになったとき、「自粛などしないで、花見をやって大いに東北の酒を飲んでください」と全国に呼び掛けた。東北のおいしい地酒が全国に知られ、日本酒質の向上の契機となった。今回は、全世界で日本酒がどのように飲まれているかを、実体験に基づいて喋りまくった。その締めくくりの言葉として以下の発言だけを掲げておく。
 「日本酒は、今や世界の恋人となっている。この恋を成就させよう。そのためには、まずこの日本で大いに日本酒を愛し、飲み広めよう」

 南部美人や獺祭はもとより、磨き7%の伯楽星にしても、今や日本酒は世界の酒となりつつある。


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