東京都中央卸売市場の豊洲移転問題が、連日マスコミの話題になっている。昨年の盛土問題、汚染発覚などを契機に、追及すればするほど新たな問題が顕在化してきている。
問題の根源は、2000年に石原慎太郎都知事の築地市場移転方針の命を受けた浜渦武生副知事の、東京ガスとのいわゆる「水面下交渉」に端を発するようだ。水面下交渉だから記録もなく、当時は何もわからなかったが今になって蓋を開けてみたら、その中身は大変な内容であったようだ。
都は、東京ガスのガス工場跡地を手に入れるため、都が所有する「汚染されてないきれいな土地」と等価交換することにした。しかも、土壌汚染対策費として当時見込まれた580億円(昨年10月時点の見込み額は860億円)のうち東京ガスの負担は78億円と大まけし、加えて「東京ガス側は今後も対象土地の汚染対策費を負担しないこと」という契約を結び、いわゆる瑕疵担保責任を放棄したのである。土地や物品の売買で瑕疵担保責任のない取引など考えられない。それだけではない。新たに東京ガスに譲った土地の便宜を図って、①防潮護岸設備費用の全額都負担、②橋5本や道路の早期整備、③容積率の200%から400%への緩和、など大サービスまで約束したということだ。
なぜそのようなことまでして汚染された土地を手に入れたのか? そもそも東京ガスは、「この土地は汚染されているから」と売却を渋っていたらしい。自分が今まで使ってきて、それが生鮮食料品を取り扱う市場には適さないことを一番よく知っていたのだ。それを、通常の取引では考えられない、まさに非常識といわねばならない取引条件で取得しようとした真意は何であったのか? 一般には、何か大きな見返りが贈られたのではないかと疑いたくなるが…?
すべては水面下で行われたのだ。当時の都議会にはどの程度まで報告されていたのだろうか? いわんや都民には何も知らされていない。世の中には、本当のことは何も知らされないで不条理に血税が使われていたり、命や健康に直結する食料品市場などの建設が行われたりしているのである。
しかし、これは結果論では済まされない。都議会は百条委員会を設置して徹底的に事実を解明し、石原都知事をはじめとした関係者の責任の所在を明らかにする必要がある。