昨日は、群馬の桐生や伊勢崎で40度を超え、東京でも37度に達した。今年一番の暑さにウンざりしていると、娘に一本の電話がかかった。オペラ歌手の高橋絵理さんからだ。そして、こともあろうに「故郷(くに)から西瓜が届いた。とても一人では食べきれないので、少しだけど今から持っていく」と言うのだ。
彼女は仙川に住み、わが八幡山から遠くはないが、何といってもこの暑さだ。にわかに信じがたかったが、しばらくすると「ピン、ポーン」とチャイムが鳴る。彼女は重そうな西瓜を玄関先に置いて、「ちょっと用事があるので…」と、事も無げに帰って行った。
いや~、この西瓜は美味しかった。私はガキの頃から西瓜はよく食べてきた。母の里が農家で広大な西瓜畑を営んでいたからだ。適当な甘みと十分な水分で腹を満たしてきた思い出が深い。しかし今日の西瓜は格別の味がした。西瓜独特の甘味と喉を越す清涼感が“豊かな味”として凝縮していた。
彼女の故郷は秋田県の横手市である。彼女はこのような豊かな味の中で育ち、いまや二期会の星と呼ばれるような声量豊かなソプラノ歌手に育った。娘の主宰するミャゴラトーリの公演にも常連として出演してくれている。同時に、自然の産物を近所の人々と分かち合って食べる、というう田舎の風習は、いまも持ち合わせているのであろう。
思わぬ暑さを忘れさせてくれる出来事であった。
みんなで、たくさん食べました。
五島財団オペラ新人研修成果発表リサイタルのちらしより