旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

『ともしび』につづく『家路』の閉店・・・

2020-10-22 14:32:23 | 文化(音楽、絵画、映画)



 うたごえ居酒屋『家路』から一片のハガキが届いた。時ならぬ時期の来状にイヤな予感を抱きながら文面を見ると、不安は的中、それは閉店のお知らせであった。
 『ともしび』66年に続き、『家路』も42年の幕を下ろす。その知らせに接し、戦後民主主義の最後の一角が、音を立てて崩れ落ちる響きを聞いた。その音は静かだがいつまでも鳴り響いた。
 うたごえ運動はその歴史的使命を終えたのであろう。ただ、『家路』は『ともしび』の分身でありながら、「うたとピアノと友だちと」をテーマに掲げたユニークな居酒屋で、単なる歌声喫茶と性格を異にしていた。だから、あの‘飲み屋激戦区’の新宿で42年もの営業を可能にしたのであろう。もちろん、経営にあたったP子さんの「語りと弾き歌い」という、類いまれな才能がそれを可能にしたのであるが。
 『家路』という屋号が示すように、帰路につく多くの働く人たちを、P子さんは語りと弾き歌いで42年間癒し続けた。
 
 戦後ともった巨大な灯が、また一つ消えた。


 


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