久しぶりに綱町三井倶楽部を訪れた。昔は三井銀行OB会がここで開かれていたので、毎年訪れていたがそれも絶えて久しく、その後何度か訪ねたが、今回の訪問は何十年ぶりとなる。
この建物は、1913(大正2)年に三井家の迎賓館として造られた。設計者は著名な英国人ジョサイア・コンドル。彼は日本を愛し、鹿鳴館やニコライ聖堂などを手掛けてきたが、この三井家迎賓館は、彼晩年の作で集大成ともいえる傑作。
現在の港区三田2丁目に、総面積約一万坪を擁し、うち建坪約4千坪に迎賓館とそれに対応する西洋庭園が築かれ、続く南斜面約6千坪に日本庭園が造られた。
建物は英国人らしくヴィクトリアンスタイルを基調にするが、随所にビザンチン様式やゴチック様式が施され、繊細にして豪華な内面に仕上げられている。廊下に掛けられた古い西洋画は、幾多の画商が「値付け不能」と極限の評価を下したとされており、また窓際に何気なく飾られたマイセンの装飾品などに、三井家の資力を垣間見る。
日本庭園は、周囲の高層ビルをも隠す高く豊かな緑に覆われ、池を巡る小道は敷石や太鼓橋につながれ、また随所に、きれいに剪定された跡が残され、行き届いた管理の跡が示されている。
このような豊かな空間と静寂が、都心のど真ん中に残されていること自体が驚異であり、それらを、大震災や第二次大戦を通じ110年にわたって維持してきた三井資本に、敬意を表するばかりである