旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

オバマ演説(つづき) ・・・ 言ってはいけない「必要な戦争」

2009-12-12 10:34:06 | 政治経済

 オバマ大統領のノーベル平和賞受賞演説につき、昨日「物議をかもすであろう」と書いたが、早速様々な反応が報じられている。

 予想したように、共和党が大喜びで、欧州平和愛好国に批判が出ているようだ。それはオバマ氏の提起した「必要な戦争」をめぐってであろう。
 
オバマ氏は、悪の存在する現時点では非暴力主義だけでは国を統治できないとした。つまり、人類の現到達点では、未だ「必要な戦争」を脱却できないと言うのだ。
 相手から攻撃されて已む無くやる「必要な戦争」はまだしも(これも問題かな?)、悪と定めた相手の国に乗り込んでやる戦争を「必要」とするのは、議論の分かれるところだ。
 これはあくまで、説得、話し合いで解決すべきことと言うのが平和勢力の考え方だ。それに対し、ブッシュなどを先頭とする好戦勢力は「先制攻撃論」をもって「戦争を必要化」する。
 オバマの今回の演説は、その勢力に格好の論拠を与えた。私は、オバマの真意は其れではなかったと思うのだが。

 世界の殆どの国が武力を持つ現在、少なくとも防衛のために武力を保持することを当然としてきた近代国民国家の歴史にもかんがみ、昨日提起した「理想と現実の間ざま」でどう対処すべきか簡単に答えは出ない。
 ただ、「必要な戦争」と言う言葉は、やはり吐くべきではなかったのだろう。
                           


理想と現実のはざまでーーオバマ大統領のノーベル平和賞受賞演説にふれて

2009-12-11 11:37:00 | 政治経済

 オバマ大統領のノーベル平和賞については、とかく議論のあるところであるが(私は極めてふさわしい受賞と思っているが)、それはさておき、昨日オスロ市庁舎で行なわれた授賞演説には、考えさせられることが多かった。(これまた、今後議論を呼ぶだろうが)

                  

 オバマ大統領は、「人類の到達点」という極めて現実的視点に立って、戦争と平和に対する氏の哲学を述べたと思っている。氏は、自分とオバマ政権を生み出したとする尊敬するキング牧師の、「暴力は決して恒久的な平和をもたらさない」という言葉を引用しながらも、

 「非暴力主義だけでは国家は指導できない」

とし、むしろケネディ大統領の「より現実的で達成可能な平和に集中しよう。それは人間の性質の突然の進化ではなく、人間の慣行の斬新的な進化に基づくものだ」という言葉を引用して、

 「特に軍事力が必要だと考えるのは、歴史や人間の不完全性、道理の限界を認識するからだ」

と述べた。(引用はいずれも1211日付毎日新聞一面記事より)

 人類はその誕生以来、戦争とともに存在してきた。現時点にあってもナチズムなどを生み、またテロを生み続けている。人類のこのような発展段階にあって、世界は悲しいことに「必要な戦争」を脱却できないでいる、というのが氏の主張のようだ。
 
一方われわれは、第九条という絶対的平和主義を掲げる日本国憲法を持つ。暴力は暴力を生み、ひとたび軍備を持てばその先は軍拡の道が待っているという歴史的教訓に基づくならば、世界平和への道は「全ての軍力を保持せず、国の交戦権を永久に放棄する」以外に道は無い、というのがその精神であろう。高邁な理想主義である。
 
オバマ氏自体、核廃絶の道を示すなど、究極的には恒久平和を希求する人物であると私は信じている。しかし人類の到達点に立脚した現実主義を採らざるを得ないとする。

 この現実主義と理想主義のはざまにあって、われわれはどうすればいいのだろうか?
                           


年の瀬

2009-12-09 22:35:05 | 時局雑感

 早くも上旬が過ぎようとしている。やることは一杯アル。
 ・年賀状を書かねばならない
 ・忘年会をこなさなければならない(けっこう回数が多い)
 ・会社の仕事で片付けなければならないことが山ほどある
 ・年内に決着をつけるべき約束事がいくつかある
  ・・・・・、・・・

 そんなことより、お前は充実した一年を送ったのか?
 今更、人とのかかわりや仕事の出来映えなどどうでもいいではないか
 お前自体がどうであったかだけを考えよ!

 うん? 未だそんなことを考えなければいけないの?
 そんなことからも開放された年の瀬を迎えたいなあ・・・

  それを求めること自体、肩に力が入っているよ

                          


24節気の酒 ・・・ 大雪

2009-12-07 12:28:34 | 

 今日は24節気の大雪、いよいよ雪が本格的に降り始める季節である。東京に住んでいる限りでは雪の気配はないが、天気予報を見ていると日本海側から北海道にかけては、雪のマークを見ることが多くなった。
 
今月23日は冬至を迎え、東京でも冬本番ということになる。Wikipediaによれば「鰰(ハタハタ)などの冬の魚の漁が盛んになり、熊が冬眠に入り、南天の実が赤く色付くころ」とある。南天の実が赤く色付くころとは知らなかったが、熊などがそろそろ冬眠に入る頃だろうとは思っていた。

 それよりも、秋田に関わってきたことから、ハタハタ漁が最盛期を迎えることには毎年強い関心を持ってきた。ハタハタは、今月の上旬から中旬にかけての何時か、一挙に秋田の海岸に押し寄せるのである。この魚は、昼は海底の砂に隠れており夜行動する魚であり、産卵のため秋田の海岸に押し寄せるのも夜である。第一波は10時ごろから深夜の2時ごろにかけて、第二波は明け方に押し寄せ、猟師たちはその一瞬に“一年の漁”を賭けるのだ。
 
今年は何日に来るのだろうか? 猟師たちは予報を交わしながら“その時”の準備に備えていることであろう。

 このハタハタを長期間(数ヶ月以上)塩を加えて漬け込み、搾り出した汁、つまり魚醤(ぎょしょう)が「しょっつる」(塩汁がなまったもの)である。(近時はかならずしもハタハタでなく、様々な小魚を使うようだが) そのしょっつるをだしに、ハタハタやタラや豆腐、野菜類などを煮込んだ料理が「しょっつる鍋」で、冬料理の華といえる。

     
 
魚醤と言えば、能登の「いしる」(魚汁がなまったもの)も有名だ。こちらは、イカのはらわたを漬け込んで作る。先日、大塚の居酒屋『串駒』で、仲間数人と「いしリ鍋」をつついたが、この時節の食べものにピッたしだった。
 酒は、山口県は萩の名酒「東洋美人」純米吟醸や、伏見の松本酒造の特別純米「まつもと」などを飲んだ。「東洋美人」は素敵なラベルと柔らかい香りと味で人気があったし、「まつもと」は伏見伝来のしっかりした造りで、魚醤「いしり」の特殊な匂いに負けることなく鍋の味を引き立てた。
 
酒も食も、日本伝来の味に勝るものは無い。
                    


政権交代(流行語大賞)のゆくえ

2009-12-05 14:24:13 | 政治経済

 今年の日本にとって最大の出来事は、いうまでもなく政権交代であろう。その通り今年の流行語大賞も「政権交代」が選ばれた。
 
私もこの政権交代に多大な期待を寄せている一人である。なんと言っても、半世紀続いた自民党中心政治がさすがに腐れ落ちて、旧来政権に国民がノーを突きつけて産み落とした政権だ。国民の期待が大きいだけでなく、新政権に携わる人たちも一所懸命に頑張っているように思える。

 ところが早くも、さまざまな問題が新聞やテレビをにぎわし、政権のゆくえをとやかく言う議論まで飛び交っている。いわく、「普天間移転をめぐる日米関係」、「鳩山首相の政治資金偽装問題」、「経済不況、デフレ対策と予算・財源問題」、「事業仕分け対象や仕分け方」、「各大臣の発言と閣内不一致問題」・・・・・・、はてはそのはざ間にあって「強行採決」などやるものだから、国民の間には「大丈夫かなあ・・・?」という不安がたまってくる。
 
だいたいマスコミというものは、それらをほじくることが飯のタネであるので、鬼の首をとったように報じまくる。政治討論番組の司会者や評論家の類が、これ見よがしに論じまくる。
 
しかし、いま国民が一番念じていることは「新しい政権になんとか従来政治の悪を直してもらい、少しでも国民にとって良い政治をしてもらう」と言うことではないのか? とすれば、新政権の悪いところをつつくだけではなく、良いところをどんどん進めるべく応援することではないのか?

 普天間問題など、半世紀ぶりに政権が変わったのだ。いくら外交の継続性を重視するとしても、交渉に少々の時間がかかるのは当たり前ではないか? アメリカだってその程度の覚悟はすべきで、半年や一年かけるのはむしろ双方にとっていいのではないか?
 
閣僚の意見の不一致など、新政権が出来て未だ3ヶ月だ。いろいろな意見の出るのはむしろ一生懸命やっている証拠で、目くじらを立てるほどのことではない。事業仕分けやダム問題など初めて国民の目に事実を公開した功績は大きく、それに比べれば進め方のまずさなど取るに足りない。悪い点は是正していけばいいのだ。

 断っておくが、私は民主党を全面支持するものではない。特に「鳩山政治資金問題」は重く、首相を続けるのは無理だと思っている。また強行採決などもってのほかだ。
 
ただ、今は仕事をしてもらいたいのだ。それが国民の願いであるからだ。
                            


トルコ紀行27 ・・・ 旅はみちづれ

2009-12-04 18:52:30 | 

 今までつまらない旅は一つもなかったが、特に旅の楽しさは人で決まる。つれだつ人、先々で出会った人・・・それらは旅を構成する重要な要素である。今回のトルコの旅は、JTBの定型ツアーに5人(K氏親娘とわが夫婦)で参加した。われわれ5人は何十年来の知己であるので、何に気兼ねすることなく楽しんだ。常につるんでいたし、常に二家族別々の行動もした。それは水の流れのごとく自然であり、トルコに対する目的も共有していたので、実に楽しい旅であった。

 ツアーメンバー23人の残る18人は、当然の事ながら初対面だ。8日間同じホテルに泊まり、同じ食堂で食事をし(テーブルまで全員一緒ではないが)、同じバスに乗り、同じガイドさんの説明を受けながら同じものを見て回る。当然これらの人たちといかに気が合うかが旅の気分を左右する。
 そして、日が経つにつれて少しずつ親しくなる。全ての人と親しく言葉を交わすまでは行かなかったが、それでも笑顔を交わしながらの旅である。結果は、実に気持ちのいい人たちばかりであった。途中、たくさんの日本人旅行グループに出会ったが、どのグループより我々の仲間は品格、知性、振る舞いの点で優れていたと思っている(自分を除いての話であるが)。
 M夫妻とは親しくしていただいて、帰国後も、私の撮りそこなった写真を送ってもらったりしている。旅行中一番人気は「絵美ちゃん理恵ちゃんカップル」で、二人とも天性の明るさと実にいい気立てが周囲の人を寛がせてくれた。聞けば看護師さんと薬剤師さんらしく、やはり「人につくす」優しさがにじみ出ていたのであろう。嬉しいことに、来月名古屋に行く機会に再開を約束してくれた。
 驚いたのは、S夫妻が偶然にも私のブログを既に読んでくれていたことだ。一日平均150人のアクセスしかないブログなのだ。わずか18人の初対面の人の中に、そのような方が居ようとは信じられなかった。

 添乗員大三輪さんと、現地ガイドフラットさんの素晴らしさは何度も触れた。イズミールからカッパドキアまで長いバスを安全に運転してくれた運転手さんとも言葉は通じなかったが、毎日何回も目で挨拶しながら親しく過ごした。その運転手さんの名前は「Metin Akar Cabuk Atlar Lekesi Patlar」という長い長い名前である。今まで聞いた一番長い名前で、こんな人に会えるのもまた「旅はみちづれ」のなせるところである。
                           

    
        長い長い名前の運転手さん


早くも師走・・・

2009-12-01 17:04:04 | 時局雑感

 今年もあと一ヶ月となった。毎年「一年経つのが早い」と言いつづけて来たが、今年はまたもや「これまでで一番早い一年だった」という感を強くしている。
 歳をとるとなぜ一年の経過を早く感じるようになるのだろうか? 一般には、為すことも無く過ごしているので早く過ぎる、子供のときは毎日が新鮮で充実しているので長く感じるなどと言われている。しかし、よく考えれば逆のような気もする。何も無ければジリジリしながら長く感じ、いろいろありすぎるとドタバタ過ぎて短く感じるのではないか、などと思う。
 しかし、どう見ても子供の頃の一年に比べて最近の一年は早く過ぎる。

 ところで、自分にとって今年は無為な年であったか・・・? 決してそんなことは無かった。ずいぶんいろいろなことがあった。年頭から二つの連載物を書いた。一つは、「こめたび」という会社のブログに『秋田歳時記』を毎月書いた。そのため3回ばかり秋田に出かけたし、かなり大量な資料を集め取材をして勉強した。それにしては出来栄えがすぐれないが・・・。
 もう一つは自分のブログに『24節気の酒』なるものを連載した。これは、後2回を残すが、文字通り24回、月2回書きつづけてきたのでそれなりに大変であった。その日を忘れないようにするだけでも、年寄りにとっては大変だ。資料もファイル一冊いっぱいになった。
 連載と言えば、九月下旬にトルコツアーに出かけ、帰国後ブログに『トルコ紀行』として現在まで26回書きつづけてきた。出かける前に『トルコで何を見るか』(5回)なども書いているので、われながら執念深く書いたものだと思っている。

 トルコ旅行は20回目の海外旅行でもあり実に面白い旅であったし、国内の酒の旅や催しも例年に比し多かった。仕事は未だ常勤態勢を続けているし酒も毎日飲んでいる。夏から秋にかけては総選挙――政権交替にかなり関心を持って臨んだし、今年は例年になく充実した年ではなかったかと思っている。

 それでも一年経つのがかつてなく早い。
 この程度の充実度では、まだまだ足りないと言うのか・・・?
                   


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