５年ぶりに…

昔、近所に住んでいてアジア雑貨屋さんをやっていたおじさんが訪ねて来てくれた。

名古屋へ来たばかりの頃、うちの近所で手織りのお店と他にアジア雑貨のお店を2店舗やっていた。一度話を聞きに行って食事を奢ってもらったこともある。その後、ひとつづつ店を閉めていき、ちょうど最後の店が立ち退きになるのをきっかけに店を畳んだ。ちょうど14年前、2009年頃だったと思う。その後、割とすぐにビルの管理会社に転職していた。それが、今年定年を迎えるという。

ちょうど私とひと回り違うこのおじさん、同志社大学を卒業した後、一度も就職することなく30手前まで海外をほっつき歩いていたらしい。で、帰国後、しばらくバイトして貯めたお金でアジア雑貨屋を始めたという。私とまったく似たような過去を持つおじさんで究極の自由人だ。癖はあるけれど話は面白いし、物知りで嫌味もない。ただし掴みどころがなく、どこか人間的に信用できない部分がある。けれどこういう人は嫌いではない。会社では、中途だし出世もないだろうから、適当にクビにならないように働いているという。頭は良いだろうから、会社には別の顔で自分をひた隠しにして勤めているんだろうなと思っている。

ずっと独り身。コロナ前までは、休みの度にタイやフィリピン、時々なぜかポーランドに出掛けていたとか。この3年は、どこにも行けなくなったので、今は山登りをしているという。こんなところまで行動パターンが似ていると、ちょっと嫌になってくるが、まぁ仕方ない。

定年後は？と聞くと、タイかフィリピンに引っ越そうと考えてるらしい。で、どうも若い子を見つけ、老後の面倒を見てもらおうと、そういうのが会話の中から透けて見えていた。貯えがどれだけあるのかわからないが、「全部はぎとられて、マニラ湾に沈められないように気を付けて下さいよ…」と言うと、「命取られちゃダメだけど、おそらく全部取られてからなんだよね、あの国の良さがわかるのって…」とのこと。

65歳だけれど、本当に思考が若い。今日はとても饒舌で楽しそうだった。
この人ならどこでも生きて行けそうだ。

こういうちょっと人の道を外れた人と話をすると、なぜか元気が出てくるから不思議だ。家族もいないし、そもそも畳の上で死のうと思っていない。ひたすら自分の為にだけに生きる人生もありだなと思う。

人や社会に迷惑を掛ければそれで良い。

おじさん！元気でね…。